ビジネス

法人減税は国民に還元されないと小泉政権時に証明されている

 安倍政権による消費増税は日本経済に決定的なダメージを与える。『アベノミクスが激論で解けた!』(共著、小学館刊)で安倍政権の経済政策を評価しつつも、増税には一貫して反対してきた、経済評論家・三橋貴明氏が警鐘を鳴らす。

 * * *
 私はアベノミクスを基本的に評価してきたが、デフレ脱却前の消費増税は愚策としかいいようがない。昨年上半期には、立て続けに放った第1、第2の矢が功を奏し、輸出企業を中心に業績が好転。企業の所得が増えたことで税収も増えていた。ところが、それに水を差すように消費増税を決定してしまった。今年4月の消費税引き上げでこれまで順調だった安倍政権の経済・金融政策は水泡に帰す可能性がある。
 
 そもそも税金の原資は国内の所得の合計「名目GDP(国内総生産)」だ。税収を増やすには名目GDPを成長させる政策を打てば済む話だった。その名目GDPは1997年をピークにこの15年間あまり、まったくと言っていいほど伸びていない。デフレだからだ。
 
 ならば、デフレを脱却して名目GDPを増やせば良い。経済成長すれば勝手に税収は増えるので、増税の必要などなかった。むしろ増税によって国民が金を使わなくなれば企業の所得が減り、税収は減る。

 さらに安倍政権は、国民から徴収した所得の一部を大企業に還元する「法人税減税」を消費増税とセットで打ち出そうとしている。

 法人減税をして企業の純利益が増えれば国内投資に回り、最終的に国民が恩恵を受けるというのは絵に描いた餅に過ぎない。企業が潤ってもそれが広く国民に還元されないことは、戦後最長と言われた小泉政権下の「いざなみ景気」が証明している。賃金は頭打ちで、正社員が減り非正規雇用が増えた。またしても「実感なき景気回復」を繰り返すだけだ。
 
 消費税は安定財源であり、景気がどれだけ悪化しても徴収される。増税分を価格転嫁できず、収益が圧迫された多くの中小企業が立ちゆかなくなることは必至だ。デフレ脱却を目指す政権が何をやっているのか。
 
 財務省は「財政均衡主義」というドグマに侵されている。前述の通り、GDPが拡大すれば税収は自然に増える。それを焦って財政均衡に走れば、逆に税収は減るのだ。財務省に主導権を握られ、安倍政権が強行した消費増税こそ、景気腰折れの元凶だ。

※SAPIO2014年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン