愛知県の中学生が検証し、「メロスは歩いていた」としたレポートが理数教育研究所主催のコンクールで最優秀賞を受賞して話題となったが、日本文学には『走れメロス』のほかにもツっこみたくなる矛盾がまだまだある。
「これは設定ミスだろう」といいたくなるのが、谷崎潤一郎の『痴人の愛』。真面目なサラリーマンがカフェーで見初めた美少女を自分好みの女に育て上げて妻にするというストーリーだが、舞台は大正末期なのに、主人公が貰っている給料は150円。当時の銀行員の平均給与40円の4倍近くにもなる超・厚待遇。
「谷崎が世間の相場を知らなかったために、自身の収入を基準に考え破格の給料をもらう設定にしてしまったのでは」(比較文学者の小谷野敦氏)
薄給を嘆く一般庶民からは、密かに反感を買っていたに違いない。
※週刊ポスト2014年3月7日号