ビジネス

元伊勢丹バイヤー・藤巻幸夫氏 カリスマ伝説と直面した誤算

 結いの党参院議員で伊勢丹の元カリスマバイヤーとして知られる藤巻幸夫氏が3月15日に死去した。54歳の早すぎる死に、政界のみならず経済界からも藤巻氏を悼む声が相次いでいる。

 藤巻氏は上智大学経済学部経営学科を卒業後、伊勢丹に入社。その後、『バーニーズ・ジャパン』、『解放区』、『リ・スタイル』などアパレルブランドの立ち上げや企画商品の開発などで辣腕を振るった。

「中高年層がターゲットの三越、高島屋に対抗し、若者にも支持される伊勢丹ならではのオシャレな衣料品の品揃えや売り場改革を実現させ、フッションに強い新宿本店の礎を築き上げた」(流通評論家)

 学生時代より“ファッションフリーク”を自認していたという藤巻氏だが、伊勢丹に入社を決めたのは「たまたま」だった。経済誌『月刊BOSS』(2005年4月号)では、報道キャスターの長野智子氏との対談で、こんなエピソードを披露している。

<ある時、たまたま合コンの待ち合わせ場所が新宿の伊勢丹のそばだったことがあってね。オレ、新宿ってなんか汚い街のイメージがあってちょっと敬遠してたの。ところが、伊勢丹の店内を見た途端、ビビッときて一目惚れしちゃって。何だかわからないけど、すごく大きなときめきを感じたわけ>

 そんな熱き情熱を持って伊勢丹に入った藤巻氏も、いきなり頭角を現したわけではなかった。最初の配属先はバーゲン売り場の担当。

<根性と気合いは十分なんだけど、オレ、キュロットとキャロットが区別できなくて、キュロットをニンジンと勘違いして「何ですか、それ?」って(笑い)。婦人服も売ったことなんてないし、針を自分の手に刺しちゃって「もう、何やってんの、あなた!」みたいにメチャクチャ怒られてた>(前出の対談より)

 伊勢丹で一から学んだファッション業界のイロハは、後に社内で花開くだけでなく、肌着メーカー「福助」の経営でも如何なく活かされた。『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏が話す。

「当時、経営再建中だった福助の立て直しのために請われた藤巻さんは、和物のファッションにありがちな保守的な商品構成やマーケティングを斬新な“伊勢丹メソッド”で次々と壊し、老舗企業の経営まで近代化させました」

 藤巻氏は福助の再建をわずか1年足らずで果たしたことで、カリスマ経営者としての手腕も一気に知れ渡ることになる。その後、2005年に鳴り物入りでイトーヨーカ堂の取締役(衣料事業部の部長)に迎えられ、「将来の社長候補」とまで目されていた。

 だが、大手GMS(総合スーパー)入りにより、藤巻氏は多くの「誤算」に苦しみ、紆余曲折を経ることになった。

「百貨店と総合スーパーとでは企業文化が違いすぎたことに加え、2005年の暮れには西武百貨店とそごうを傘下に持つミレニアムリテイリングがセブン&アイのグループに入ることになり、藤巻さんの存在感が希薄化してしまいました。さらに、ユニクロに代表されるファストファッションの台頭で、百貨店アパレルの常識が通用しなくなった時期とも重なります」(前出・河野氏) 

関連キーワード

トピックス

史上初の女性総理大臣に就任する高市早苗氏(撮影/JMPA)
高市総裁取材前「支持率下げてやる」発言騒動 報道現場からは「背筋がゾッとした」「ネット配信中だと周囲に配慮できなかったのか」日テレ対応への不満も
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
「父と母はとても仲が良かったんです」と話す祐子さん。写真は元気な頃の両親
《母親がマルチ商法に3000万》娘が借金525万円を立て替えても解けなかった“洗脳”の恐ろしさ、母は「アンタはバカだ、早死にするよ」と言い放った
NEWSポストセブン
来日中国人のなかには「違法買春」に興じる動きも(イメージ)
《中国人観光客による“違法買春”の実態》民泊で派遣型サービスを受ける事例多数 中国人専用店在籍女性は「チップの気前が良い。これからも続けたい」
週刊ポスト
競泳コメンテーターとして活躍する岩崎恭子
《五輪の競泳中継から消えた元金メダリスト》岩崎恭子“金髪カツラ”不倫報道でNHKでの仕事が激減も見えてきた「復活の兆し」
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」
米・フロリダ州で元看護師の女による血の繋がっていない息子に対する性的虐待事件が起きた(Facebookより)
「15歳の連れ子」を誘惑して性交した米国の元看護師の女の犯行 「ホラー映画を見ながら大麻成分を吸引して…」夫が帰宅時に見た最悪の光景とは《フルメイク&黒タートルで出廷》
NEWSポストセブン