国際情報

最終的にウクライナが四つに分裂する可能性を大前研一氏指摘

 ウクライナのヤヌコビッチ大統領が追放されて以来、混乱が続いている。クリミア半島が完全にロシア軍によってコントロールされるようになったため、欧米各国との対立は深まるばかりだ。今後のウクライナのゆくえについて、大前研一氏は最終的に四つに分裂するかもしれないと予測している。

 * * *
 クリミア半島を巡るウクライナ情勢の混乱が続いている。ロシア軍部隊がクリミア半島を完全に掌握。これに対してウクライナ暫定政権のヤツェニュク首相は「ロシア軍の侵攻は私たちの国に対する宣戦布告と同じだ」と警告し、欧米各国は、ロシア・プーチン大統領への非難を強めている。

 これからウクライナとクリミア半島はどうなるのか? 5月25日投開票の大統領選挙には、親欧米派から前政権時代の野党第一党「祖国」を率いるティモシェンコ元首相や、同第二党「ウダル」党首で元ボクシング世界ヘビー級王者のクリチコ氏らが立候補するとみられている。

 今回のヤヌコビッチ大統領追放劇で(マラカニアン宮殿を追放されたイメルダ・マルコスを思い出させる)異常な金遣い状況が暴かれているが、これはクチマ第二代大統領も(欧米が好きな)ティモシェンコ元首相も同様だ。ウクライナの悲劇はリーダーが親欧米だ、親露だと叫んでいる割には「ウクライナ自体をどうするのか」という戦略立案に弱く、みな蓄財欲の亡者であることだ。

 いずれにしても次の政権は親欧米派が握るわけで、そうなるとロシアとしては、ますますクリミア半島を手放すことはできない。したがってクリミア半島は「第二のアブハジア」になる可能性が高いだろう(*注)。

 もしかすると、最終的にウクライナは四つに分裂するかもしれない。親ロシアの東部とクリミア半島、首都キエフがある親欧州の西部、そしてさらに西側の西ウクライナ地域である。すでに独立を宣言している西ウクライナ地域は、ポーランドに近くカトリック教徒が多いので、同じ親欧米ではあるがロシア正教のキエフなどを含む西部とも一緒になりたくないのだ。

 もしウクライナがクリミア半島や西ウクライナの独立に歯止めをかけたいなら、“緩やかな連邦制”を導入して四つの自治共和国に分けるしかないだろう。ウクライナ問題は、それほど複雑で根が深いのだ。

【*注】アブハジアは、南オセチアとともにグルジア共和国から独立を宣言した地域。ロシアを後ろ盾とした傀儡政権が支配している。

※週刊ポスト2014年3月28日号

関連キーワード

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン