芸能

杉良太郎 歌手出身で二世でもないためイジメもあったと述懐

 数多くの作品に主演してきた俳優・歌手の杉良太郎は、厳しい姿勢で作品と取り組むあまり、共演者やスタッフとの軋轢も多かったと言う。しかし、軋轢を生んでもなお、完璧を目指すことをやめなかった杉が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる。

 * * *
 杉良太郎は1974年にNET(現テレビ朝日)で放送された『右門捕物帖』に主演している。この役は映画では嵐寛寿郎が飄々としたキャラクターとして当たり役にしていた。が、杉はこのイメージを一変させ、孤独な影のある、苛烈な男として演じた。また殺陣も合気道や柔術を使った、素手で投げたり殴ったりする斬新なものであった。

『右門』や『新五捕物帳』など、杉主演の時代劇の多くはただの勧善懲悪ではない、どこか救いのなさの漂う哀しい作品が多い。これらは、杉自身が脚本や演出にアイディアを出しながら練り上げられたものだった。

「歌手出身で基礎もない、名優の息子でもない、どこで湧いたか分からないボウフラ役者がこの世界で生きていこうとすると、『身分が違う』とイジメのようなものにも遭いました。そこに抵抗して、激しくやってきました。そしてある日、自分流を作ろうと思ったんです。『杉演劇』を確立させようと。杉演劇とは様式美とリアリズムの混合です。時代劇独特の形を自分にしかできないものにしていきました。

 脚本家には新聞ネタから、今実際に起きている社会問題を書いてもらいました。こんな理不尽なことがあっていいのかと、視聴者に問題提起するという。流し目をする中年女性キラーで男の敵とかよく言われましたが、実はその逆なんです。媚びを売る気はありませんでした。ただ、時間を割いて来てくれるお客さんには応えなきゃいけない。それがプロだという意識は強い。

 立ち回りのカット割りも夜中まで自分で考えていました。役者は口出すなという意見もあったと思います。けど、視聴率を背負っているのは主役なんです。視聴率が下がった時に『お前に人気がないからだ』と降ろされるのは監督でも脚本家でもなく、主役。ですから、自分の納得のいくものをやろうとした。ただのプロではなく、プロ中のプロでなきゃいけないんです」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。

※週刊ポスト2014年4月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン