ライフ

経験ゼロの女性が思いだけで実現させた青森初のペット火葬場

 今から12年前、焼却炉を搭載した小型トラックを購入し、青森県で初めて「ペット火葬業」を始めた、ペコたま代表取締役の三浦弥生さん。依頼があればどこにでも駆けつけ、ペットが慣れ親しんだ家や思い出の散歩道など、飼い主の希望する場所で火葬を行う。

 火葬代は、ペットの体重が5kgまでは1万5000円、10kgまでは2万円。トラックの維持費や経費を考えると収益はギリギリだ。だが、

「飼い主のかたがお骨を拾っている姿を見ると、起業してよかったと心底思います」(三浦さん・以下「」内同)。

 三浦さんが、“ペットのお骨を拾える火葬”にこだわるのには理由がある。家族で大切に飼っていた犬と猫を相次いで亡くしたとき、市のペット火葬場ではお骨を拾わせてもらえず、心の中に“しこり”が残ったからだ。

「焼却するだけなんて…ペットも家族だから、ちゃんと送ってあげたかった。もっと納得のいく形はないものかと、図書館で調べまくりました」

 そこで初めて、「移動火葬車」の存在を知り、自分がこんなにつらかったのだから、他の人も同じはず、と「ペット火葬」の起業を決意。だが、その火葬車の用意こそ、開業への最大の壁だったという。

「当時はパソコンも使えず、火葬車をどこで売っているのかもわからない(笑い)。タウンページを開いて探したけれど、該当する業者はゼロ。関東版を取り寄せ、ようやく神奈川に1軒見つけました」

 すぐ連絡を取り、1週間泊まり込みで使い方を学んだ。

 だが、問題は購入費だ。トラックと焼却炉で600万円、その他の準備資金もあわせると700万円はかかるのに、自己資金は200万円しかない。500万円も借金して失敗したらどうしよう…諦めかけた三浦さんを救ったのが、地元の起業塾。

「塾では事業計画書を作り、青森県で1日あたりペットがどのぐらい亡くなっているかを試算しました。月15件依頼がくればローンが払えそうだとわかったら、“できる!”と思えました」

 次なる関門は家族の説得。三浦さんは夫の設計事務所で事務として働いていたが、退職して“借金500万円”を抱えることになる。当然、難色を示されたが根気強く説得。最後は「そんなにやりたいなら」と保証人の判を押してくれた。

 開業後は「青森初のペット火葬」「女性起業家」としてメディアでも多数取り上げられ、多いときは毎日のように依頼がくることも。心配していたトラックのローンも8年で完済。現在は新たに猫カフェ事業も展開し、県内で注目を集めている。

※女性セブン2014年5月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
プーチンと面会で話題の安倍昭恵夫人 トー横キッズから「小池百合子」に間違われていた!
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン