公明党代表自らが与野党横断の「反安倍会合」に参加したのは、首相に正面から匕首を突きつけたに等しい。公明党票に支えられた自民党内で反安倍の声が強まるのは当然だ。安倍首相は、自民党内のリベラル勢力と、与野党をまたぐ自公民結の“ストップ・ザ・安倍”勢力に二重の包囲網を敷かれて身動きが取れない状況に追い込まれた。

 いまの安倍首相に包囲網を跳ね返すだけの力はない。原因は、政権基盤の弱体化と外交の行き詰まりだ。もともと安倍首相は党内基盤が強いとは言えず、前回総裁選での議員得票はわずか54票(1回目投票。当時の自民党議員は衆参198人)だった。それを補っていたのが日本維新の会、みんなの党との太いパイプだ。

 維新の会は一時安倍氏を党首に担ごうとしたほどだし、第1次安倍政権の閣僚だったみんなの党の渡辺喜美・前代表は「連立参加を打診していた」(自民党役員)といわれる。安倍首相は「改憲支持勢力」の両党を背後に従えていると見せ、9条改正に慎重な公明党を「いつでも連立組み替えできる」と牽制して国会を思い通りに動かしてきた。

 しかし、その基盤は脆くも崩れ去った。決定的だったのは盟友の渡辺氏が8億円借り入れ問題でみんなの党代表を辞任したことだ。維新の会も地盤の大阪府議会や市議会で自民党と対立関係にあるため、統一地方選が近づけば政権と距離を置かざるを得ない。首相は切り札を失った。

■文/武冨薫(ジャーナリスト)

※SAPIO2014年6月号

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