逆に“働かせ方”によるリスクが今ほど高まっている時代はない。ブラック企業と一度認定されたら、各方面から総攻撃を受けてブランドが失墜し、採用コストは跳ね上がり、売り上げも落ちる。ちゃんと処遇するほうが損失は少ないのです。

 働き方を変えることが企業を成長させることになるとわかった。今度はそれを社会に広めていく活動を始めています。

──どんな働き方を目指すべきか。

駒崎:一言で言えば、『課長 島耕作』的価値観の終焉ですね。家族を顧みず会社を優先してその結果、出世していく。社会や組織もそうした働き方を期待する。そういう価値観はもうやめようという話です。

 実際に今、島耕作的な働き方をして出世して、それで本当に業績が上がるのか疑問です。まず部下がついてこない。仕事のために家族を犠牲にしろと言われたら、優秀な人間も逃げ出します。仕事は仕事で頑張るが、地域活動にも参加し、家族も大切にして、虹のように多様な人生が生きられるモデルを新時代の島耕作にしようと訴えたい。

 日本がこれから何で食べていくのか考えると、人に投資してイノベーションを起こすしかない。ところが、日本の教育への公的支出は先進国で最低レベル。その分、家庭の教育支出は非常に多く、2人も3人も子供をもうけられないわけです。つまり学費を下げれば少子化対策になる。

 現在の日本にとって最大の課題は人口減少と少子高齢化です。既存の社会システムすべてがそれにより影響を受ける。そこをどうするかがこの先50年の戦いです。その意味で、若い夫婦が仕事を続けながら安心して子供を産み、育てられる環境を整えることは喫緊の課題なのです。

※SAPIO2014年6月号

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