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関西人 何にでも卵を落としてまろやかでコク深い味わい演出

関東では「天玉」、関西では「スタミナ」

 卵消費量日本一の関西。お好み焼、すき焼きはもちろん、うどんにも関西人を卵を落とすのが大好きだ。関西人の卵好きの理由について、食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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 なぜ関西人は何にでも卵を落とすのか。創業100年以上となる大阪の「自由軒」の名物カレーは、ルウとごはんをごちゃまぜにしたところに生卵を落とす。東京の立ち食いそば屋で天ぷらと卵を乗せると「天玉そば」「天玉うどん」になるが、大阪ではさらに「スタミナうどん(そば)」と独特の呼称で呼ぶ店もある。赤だしの味噌汁にも卵を落とす。

「落とす」だけではない。「たまごサンド」にしても、関西以外の地域では食パン1枚あたりに卵を1~1.5個程度、それもゆでたまごを細かく刻んだものとマヨネーズを和えたディップをはさむが、関西では卵3つ分を厚焼きにしたオムレツをはさむ店が多い。「お弁当にニヌキ入れといたで」「わーい!」という朝の光景も関西ならではだろう。ちなみに「ニヌキ」とはゆでたまごのことだ。

 実際こうした関西人の卵好きは数字にも現れている。例えば、最新となる2013年の総務省家計調査(全世帯)で世帯あたりの卵への支出金額の全国平均は6689円。ところが、近畿圏だけ7471円と飛び抜けて高い。都道府県別で見ても、奈良、和歌山、京都と近畿圏がベスト3を独占している。

 さらに、都道府県別の鶏卵入荷量を見てみると、この3年、大阪が全国トップの座を揺るがぬものにしている。全国での鶏卵の総入荷量は244万9087トン。実にそのうち10.1%、1割以上が大阪に出荷されている。人口で1.5倍、飲食店の数でも東京のほうが多いにもかかわらず、大阪の入荷量が年間約2万トンも多い。この事実から、近畿圏全体での需要の多さと、近畿圏における鶏卵文化の定着度が伺える。

 ではなぜ、関西圏でこれほど卵が受け入れられたのか。考えられる大きな理由はやはり「味覚」だ。よく「キレの関東、コクの関西」というように、その地域に住まう人が味に対して求めるものは味覚によって異なる。生卵はまろやかでコク深い味わいを演出しやすい。「コク」と言えば関西人にとって大切な「昆布だし」に含まれる「グルタミン酸」も重要な役割を果たす成分だが、グルタミン酸は卵にも豊富に含まれている。

 明治生まれの随筆家、古川緑波も関西人は昔から卵好きだったというエピソードをエッセイに書き残している。ちなみに古川緑波は東京・麹町の生まれだ。

「その頃は、生卵なんか附けて食いませんでした。生卵を附けて食うのは、あれは(今では、もう東京でも何処でも、やっていますが)関西から渡ってきた、食い方で、(東京の老舗である)三河屋は、ワリシタ自慢。生卵など出さなかった。(後年は、出した)」(「牛鍋からすき焼きへ」 『ロッパの悲食記』=ちくま書房より)

 当時と比較すると、情報の流通速度は比べ物にならないほど上がり、文化はまたたく間に消費されるようになった。各地の食文化もますます入り混じっていく。だがそんななかでも決して消費されず、混ざり切らないコシの強い文化がある。卵は暮らしのなかにある食べ物だ。

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