芸能

平幹二朗 「言葉をはっきり伝えるのが役者のやるべきこと」

 俳優、平幹二朗が出演する舞台を観た人の多くは、彼が発する台詞がとても聞き取りやすいことに驚かされる。マシンガンを撃つように台詞を数珠つなぎに語り続ける現代劇が多い最近になって、言葉の伝え方について劇団四季を率いる浅利慶太から平が思い起こし、語った言葉とは。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載「役者は言葉でできている」からお届けする。

 * * *
 平幹二朗は1968年、それまで十年以上所属してきた俳優座を離れ、劇団四季の団友になる。四季を率いる浅利慶太と平は、その二年前に浅利演出の舞台『アンドロマック』で出会っている。

「その当時は新劇全体のレパートリーが政治的なアピールをする傾向になっていまして、居心地が悪くなってきたんです。僕がやりたいのは、情念や愛憎を描いた、人間の芝居でした。

 そんな時にたまたま浅利慶太さんがフランスの劇作家・ラシーヌの『アンドロマック』という芝居をやることになりましてね。日本では古典もの以外では台詞の朗誦術が確立されていないので、それを探し出して見つけたいと浅利さんは言い、僕と市原悦子さん、渡辺美佐子さん、日下武史さんとみんな三十代の中堅俳優を集めて、台詞だけでいろんなことを語る芝居をやっています。そこで僕は初めて『こういう芝居をやりたかったんだ』と思ったんです。

 その後、四季の十五周年に『ハムレット』をやるから出ないかと言われました。ただ浅利さんとしてはヨソの劇団の者が十五周年の主役をやるのはまずいので、俳優座を辞めて来てくれないか、と。そこで初めて岐路に立って、俳優座を辞めました。

 でも、四季には入りませんでした。劇団というものが僕には合わない感じがしていたんです。人の中で自分を強く出していくことができないので、劇団だとどうしても隅っこに行っちゃうんです。そういう性格が分かったので劇団には入るまいと、今まで一匹狼でやってきました」

 劇場で平の芝居を見ていて感じるのは、その台詞の聞き取りやすさだ。ハッキリとして、それでいて流れるような調子で耳に入ってくるため、客席で聞いていてストレスが全くない。

「浅利さんは今も同じことをおっしゃいます。それは『言葉はあくまでも観客に伝わらなくてはならない』ということです。そのためには一節ずつ全て綺麗に『音が切れる』必要がある。

 例えば台詞で『お』が続くことがあります。『たけお、おまえを、おこる』これを『たけおおまえをおこる』と言うと芝居では分からない。『たけお』『おまえを』『おこる』と言わないとお客さんには伝わらない。それでいて自然に言わなきゃいけない。それで初めて伝わるんです。

関連キーワード

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン