「印象派の殿堂」として知られる、フランス・パリのオルセー美術館。5月29日、ここで驚くべき事件が起こった。30歳の女性芸術家が、何の前触れもなく自らの股間を作品として“展示”したのだ。この衝撃の“事件”をレポートする。
オルセー美術館の20番ホールには、観る者に「アートとは何か」を問いかける挑戦的な名作が展示されている。それは『世界の起源』──19世紀フランス写実主義の巨匠、ギュスターブ・クールベが残した油彩画である。
この作品でクローズアップされるのは、豊かな陰毛に覆われた女性の陰部。1866年の発表当時からヌード芸術表現の議論を巻き起こし、その論争は150年近くたった今でも続いている。この歴史的作品が掲げられた場所で、突如観客たちのざわめきが起こった。
金色のドレスを着た黒髪の白人女性が、作品の前で両脚を大きくM字に広げ、座りこんだのである。鼻筋の通った美しい女性で、どこかウィノナ・ライダーを思わせる。ドレスの下に下着は着けていない。股間には、黒々としたヘアが見えている。
そしてその奥には、壁に掛かった『世界の起源』のように、いやそれよりもはるかに大胆に、女性器が露出していた。
女性は羞恥の表情を浮かべることも、ほほえむこともなく、無表情で虚空を見つめている。目元には、青い色で涙を模したような化粧が施されていた。
同美術館で1、2を争う人気作品の前だけに、その時も多くの観客たちがいた。ある者は驚きの声を上げ、ある者は絶句した。その間、わずか数分──。やがて美術館の警備員が駆けつけ、彼女を観客の目から隠した。その後、警察が彼女を拘束したという。
その女性は、ルクセンブルク出身で、アーティストを名乗るデボラ・ドゥ・ロベルティス氏(30)。彼女はこの行動について「アートだ」と説明した。
フランスのテレビ局「アンフォ」のインタビューに、彼女はこう答えている。
「少なくとも8年前から考えてきたアート作品です」
「これは単なる露出ではない。衝動的な行為でもない。私のアーティストとしての視点が問われるべきだ」
そしてこうも話した。「誰も私に触れなかったことに驚いている」──。仏ラジオ局「ウーロップ1」によれば、彼女は処罰を受けることなく釈放されたという。
※週刊ポスト2014年7月11日号