ビジネス

ソフトバンク 被災地の高校生を100人規模で米国留学に招待

 ソフトバンクでは、孫正義社長肝いりのCSR活動が数多く展開されている。話題になったメガソーラー発電所や風力発電所などの建設による「再生可能エネルギー事業」もその一環だ。

 CSRの中でも力を入れている活動の一つが、東日本大震災を受けて始まった「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」。

 被災地の岩手、宮城、福島の高校生を、孫社長の母校であるカリフォルニア大学バークレー校で夏季に行なわれる3週間の集中コースに100人規模で招待する内容。グローバルリーダーシップと地域貢献や都市計画について学び、米国の文化にも触れる。今年夏で3回目を迎える。

 資金を出すだけではない。立ち上げには意外な苦労があった。社長室CSRグループの堀田真代氏(33)が語る。

「3県には約300の高校があり、津波被害のひどかった沿岸部には約80校あります。志のある高校生を募集するため、それらに1校ずつ連絡した上で訪問して、一から説明しました。スーパーや道の駅にも告知ポスターを貼らせてもらいました。まるで飛び込み営業。社内では〝売れない演歌歌手みたいだね〟なんて言われました(笑)」

 被災地をどぶ板で回る。だが、いい反応ばかりではなかった。「夏は夏期講習があり、3週間も米国に行ったら受験に影響を与える」と否定的な教師もいた。

 このプログラムは大学受験という目の前のことではなく、長い目で「東北を支える人材」を育てることが目的だ。同CSRグループの北村高宏氏(25)。

「『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・ユニバーシティ』といったピクサーのヒット作に携わるアートディレクターの堤大介さんやシリコンバレーのエンジニアなど、アメリカで活躍している日本人と交流する『キャリアセミナー』というプログラムは好評です。地方の高校生に、将来の職業の選択肢を挙げさせると意外と狭い。様々な分野で活躍している多くの大人と会うことで、イメージできる生き方の幅が広がるようです」

 すでに地域貢献に動き出した”卒業生”もいる。第1回のプログラムに参加したいわき市の高校生たちが「地元を盛り上げたい」と、旅行大手のエイチ・アイ・エスと協力し、地元いわき市の魅力を体験できるツアーを企画。200人を超える参加者を集めた。

 堀田氏と北村氏は、高校生たちと一緒にバークレー校で3週間過ごす。孫社長も直接、参加した高校生から報告を受けるという。堀田氏は今まで100回近く東北出張を繰り返してきた。未来のアントレプレナーをどれだけ生めるか注目される。

●取材・文/永井隆(ジャーナリスト)と本誌取材班

※SAPIO2014年7月号

関連記事

トピックス

石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り」がSNSを通じて拡散され問題に
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
『東宝シンデレラ』オーディション出身者の魅力を山田美保子さんが語ります
《第1回グランプリは沢口靖子》浜辺美波、上白石姉妹、長澤まさみ…輝き続ける『東宝シンデレラ』オーディション出身者たちは「強さも兼ね備えている」
女性セブン
9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン