お酒の税金については大まかに2つの考え方がある。まず一つは、お酒は健康を害するものだから、税金を掛けて値段を高くする、という考え方。この発想でいけば、アルコール度数の高いお酒ほど、税金は高くなるはずだ。二つ目は、お酒は嗜好品、つまり贅沢品なので税金を掛ける、という考え方。こちらの発想なら、高級酒、つまりよりお金持ちしか飲めないお酒の税金が高くなる。
ところが、日本のビール税は、どちらでもない。いわば「庶民の酒で消費量が多く、税収を増やしやすいから高い税を取る」ということなのだ。
「ビール」に課される高い税率を避けるために開発されたのが、「発泡酒」(前出の酒税組合公表資料によれば税合計約34%)や「第3のビール」(同約25%)という日本独自のガラパゴス商品だ。国民の嗜好ではなく、酒税法による規制から生まれた。
メーカーの企業努力で「発泡酒」や「第3のビール」の味はビールに近づいているとはいえ、原料の制約はいかんともしがたい。いわば酒税法の規制で国民はどんどん「おいしくない酒」を飲まされているに等しい。まさに、「下戸」(税金を払えない家庭)は酒を飲むなというようなものである。
それなのに、かつての政府税制調査会長は第3のビールについて、「最近、ビール風のビールみたいなものが、まがいものといっては失礼かもしれないけれど、出てきている。酒の文化を損なっているのではないか」(2004年の会見)などと言っている。一体誰のせいで酒の文化を損なったのか。不合理な規制のためにメーカーはそのように強いられ、日本の国民は、「庶民の酒に高い税をかける」という役所の理不尽な政策のために、おいしいビールを味わう機会と酒の文化を損なわされているのだ。