国際情報

中国の武装警察 1人当たり装備費500万円・全体で7.5兆円

 習近平体制となった中国では治安維持予算が膨れ上がっている。25年前の天安門事件を現地で取材したジャーナリスト・相馬勝氏は習主席が「次なる天安門事件」を恐れていると指摘する。

 * * *
 中国では治安維持対策が焦眉の急となっている。それを端的に示したのが4月中旬の中央国家安全委員会の初会合だった。
 
 同委トップの習近平は会議の冒頭、重要講話を行ない、「総体的国家安全観」という新しい概念を提起。分かりにくいものもあるが、「政治(安全)、国土、軍事、経済、文化、社会、科学、生態、資源、核、情報、伝統、非伝統」の13項目を挙げて、「それらの『安全』を守るのが『総体的国家安全観』の要」と説明した。
 
 一般的に「国家安全」というと、外部からの軍事的脅威を連想するが、13項目のうち安全保障に当てはまるのは「軍事」の1項目だけで、あとはすべて「国内の安全」に関係している。つまり、治安維持を進めろという意味だ。
 
 中国では国内治安維持の関係予算は2010年から2013年まで4年連続で国防予算を上回ってきた。今年の国家予算分は前年比6.1%増の2050億6500万元(約3兆4100億円)に達したが、中央政府分より多い地方政府分の予算は非公開にされている。このところ、治安維持費が国防予算より多いことが海外メディアで強調され、「国内の暴動多発」の傍証とされてきたことから、今年は治安維持関連予算の全容を非公開にしたとみられる。
 
 治安維持予算の大盤振る舞いは、国内治安維持を担当する武装警察の装備予算からも分かる。香港の親中国系紙「文匯報」によると、武警隊員は欧米製の最新式兵器を支給されており、自動小銃や拳銃のほか、催涙弾、特殊ナイフ、伸縮自在の警棒、防弾チョッキなど計10種類、重量が15㎏にも及び、1人当たりの装備費は30万元(約500万円)に達している。武警隊員は約150万人と伝えられ、隊員の装備予算だけで7兆5000億円、国家予算分の2倍をはるかに上回っている。ここからも、地方政府予算もまた膨大であると予測できる。
 
 習近平は党・政府幹部や職員に対して「ぜいたく禁止令」を出しておきながら治安維持には予算を惜しまず、その矛盾が苦しい現状を物語っていると言えそうだ。
 
 中国はいま民衆の強大な圧力にさらされており、いつ、どこで第2、第3の天安門事件が起きても不思議ではない危急存亡の危機を迎えている。
 
※SAPIO2014年7月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
素材はピカイチとされたが…
【オコエ瑠偉が巨人を電撃退団】「阿部監督一強体制」で反発は許されなかったか メジャー移籍は厳しい現実、“ランクを下げながら海外移籍を模索”のシナリオも
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン
いまだ“会食ゼロ”だという
「働いて働いて…」を地で行く高市早苗首相、首相就任後の生活は“寝ない”“食べない”“電話出ない” 食事や睡眠を削って猛勉強、激ヤセぶりに周囲は心配
女性セブン