国内

薬局・薬剤師業界による巨額献金で処方箋薬ネット販売が禁止

 政府が先日発表した新成長戦略は、岩盤規制打破を目指したはずだった。しかし、ごく一部の既得権者が利益を確保する仕組みの多くは温存されたままだ。様々な分野にはびこる「岩盤規制=役人の掟」の全容を明らかにする話題の新刊『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)を上梓した元キャリア官僚・原英史氏が、薬品の規制について斬り込む。

 * * *
 6月に改正薬事法が施行され、「薬のネット販売解禁」だと話題となった。国民生活が便利になる規制緩和だと思うかもしれないが、大間違いだ。

 処方箋なしで買える大衆薬については大部分がネットで購入できるようになった一方で、今回の改正ではこれまで法律に明記されていなかった「処方箋薬のネット販売の禁止」がこっそり盛り込まれた。

 病院で医師から処方される薬は院内でもらうか、薬局で買うもの―と思っているかもしれないが、欧米先進国ではネット販売が当たり前(もちろん大衆薬の販売も認められている)。

 診察だけ受けて家に薬を届けてもらえるようになれば薬局に出向く必要がなくなり、移動が困難な高齢者などにとっては大いに助かるはずなのに、日本では許されない。

 裏側には、既得権者である薬局・薬剤師業界の存在がある。ネット販売が認められれば、昔ながらの薬局にとっては大打撃だ。本当のところ彼らは大衆薬のネット販売解禁も認めたくないのだが、2013年に規制を違法とする最高裁判決が出たため「処方箋薬の利権だけは守ろう」と動いた。市場規模で見れば処方箋薬の売り上げは6兆円を超え、大衆薬の10倍。こちらが利権の本丸だ。

 なぜ薬局・薬剤師業界の思惑通りにことが運ぶかといえば、彼らが政界に数億円単位の献金をして集票マシーンとして機能しているから。厚労省から業界団体への天下り等を通じて役所とも密接な関係にある。

「鉄のトライアングル」によって、少数者の既得権のため国民が不便を強いられる典型例だ。

※週刊ポスト2014年7月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

羽生結弦が主催するアイスショーで、関係者たちの間では重苦しい雰囲気が…(写真/AFLO)
《羽生結弦の被災地公演でパワハラ告発騒動》アイスショー実現に一役買った“恩人”のハラスメント事案を関係者が告白「スタッフへの強い当たりが目に余る」
女性セブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
『ここがヘンだよ日本人』などのバラエティ番組で活躍していたゾマホンさん(共同通信)
《10人の子の父親だったゾマホン》18歳年下のベナン人と結婚して13年…明かした家族と離れ離れの生活 「身体はベナン人だけど、心はすっかり日本人ね」
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り」がSNSを通じて拡散され問題に
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン