女性版にもなかなか厳しい設問がある。「今日だけは飲むまいと思っていても、つい飲んでしまう」ことは男女関係なく珍しくもない話。「飲酒しながら仕事、家事、育児をすることがある」となると、“ママ友とのランチでワインを一杯”も“ビールを飲みながら自宅で翌日の資料作り”もNGとなってしまうのだ。
この判定方法の正式名称は「新久里浜式スクリーニングテスト」という。日本初のアルコール依存症専門病棟を設立した久里浜医療センターが作成したもので、前述の厚労省などのHPでもこのテストをそのまま掲載している。「新」という名称からわかるとおり、この診断テストは10年前に作成された“新規準”だ。
医療機関における依存症診断はWHO(世界保健機関)の規準に基づいて行なわれるのが一般的だ。この診断は「離脱症状」が重視され、「飲酒を中断した後に痙攣発作を起こす」「飲酒を中断した後に手指、躯幹(胴体)の振戦(ふるえ)が起きる」など、飲酒後の状態を医学的に判断する手法が含まれ、単なる飲酒習慣の調査ではない。
それに対して、「新久里浜式」は「簡易版」という位置づけであるとはいえ、依存症(の疑い)に当てはまる人が増えてしまう。有り体に言えば「厳しい基準」なのだ。
依存症という疾病に注意を喚起することの大切さは否定しないが、「昼間に飲酒したら、依存症かもしれません」というのは、いくら何でも“啓蒙活動”が過剰なように思えてならない。
※週刊ポスト2014年7月18日号