スポーツ

W杯惨敗 協会批判できない御用メディアにベテラン記者が喝

 ワールドカップでなぜ日本は惨敗を喫したのか。十分な総括も行われないまま、新監督の就任が取り沙汰されている。サッカー取材歴60年、サッカー記者の草分け的存在である中条一雄さんが「喝」を入れる。

 * * *
 日本代表は技術、体力、個人的才能が全部ありませんでした。戦略や戦術を磨いても戦闘力が無かった。

 具体的にはストライカーがいない。ワントップにするにしても、新聞に載っていた代表OBたちの予想を読んでいたら、大久保嘉人を推す者がいれば、岡崎慎司や大迫勇也を推す者もいた。つまり誰も決め手に欠いていたんだよね。

 メディアは本田圭佑、香川真司をやたらもちあげていたけれど、ヨーロッパにあれぐらいの選手は100人や200人はいると、テレビを見ていた人も十分わかったと思います。サッカージャーナリストたちが知らないはずがないと思うんだけどね。どうも見方が甘い。

 ストライカーがいないとずっと同じ課題を指摘されてて、同じ負け方を繰り返しているのは日本サッカー協会にそれだけ哲学がないということです。ザッケローニ監督の責任だけじゃ無くて、協会の偉い人たちも自分たちがやってきたことを反省してほしい。

 それが現れていたのが、ザッケローニさんをすぐイタリアに帰しちゃったこと。帰国させる前になぜ4年間の総括を聞かないのか。

 敗れましたが、ザッケローニさんは人柄も良く、イタリア・サッカーの神髄を知る人ですよ。協会内部で聞き取り調査をしたかもしれませんが、公の場でやるべきです。国内の指導者やジャーナリスト、サポーターも招いてシンポジウムのような形でいい。今は新監督人事の話題に移っていますが、まるでザッケローニさんの口封じのよう。いまの日本サッカー協会は風通しが悪いし、いつも自分たちの責任を回避している。これでは同じことをまた繰り返すことになります。

 メディアもそれに荷担している部分がある。ワールドカップの取材パスの関係で、監督の批判は書けても協会の批判はしづらい雰囲気があるのではないか。

 私が初めてW杯を取材した1974年の西ドイツ大会では、日本から現地取材に行った記者は4、5人でした。FIFAに直接申し込んで取材パスを受けていた。それが1994年アメリカ大会か1998年フランス大会から、日本からの申請者が殺到するようになって、日本サッカー協会がパス申請を受け付けて管理する体制に変わりました。

 私も8大会連続で取材を続けてきたんですが、2006年のドイツ大会で初めてパスが給付されなかった。日本サッカー協会の「審査」に落ちちゃったんですね。理由は明らかにされませんでしたが、周りでパスの給付を受けた人、受けられなかった人をみると、たぶんJ1など国内リーグの取材実績が関係していたと思います。

 つまりW杯の取材パスなのに、W杯の取材実績は関係なくて、日本サッカー協会が描く日本サッカーの普及に協力してたかどうかが問われたんだよね。協会に協力しているメディアに「ご褒美」としてパスを出している。これではまともな評論は育たないし、きちんとした評論無くして日本サッカーの進歩もありません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン