前川氏がそう指摘するのはソウル特派員時代に支援団体の実態を目の当たりにしたからだ。同氏の著書には1993年に細川護熙・首相(当時)が訪韓した際に行なわれた慰安婦デモの様子が詳述されている。冷たい雨の中、元慰安婦たちは傘も差さずにチマチョゴリ1枚だけで歩かされ、前川氏の目の前で路上に倒れ込んでしまったという。
「これが“人権団体”のやることかと疑問を抱かざるを得ませんでした。別の支援団体の集会では、元慰安婦たちは議論に飽きてしまったのか途中で席を立って日本人記者の間に入り、『あんたは男前だね』などと世間話をしたり、『国連に訴えたからもらえるお金がうんと増えるといわれたの』と嬉しそうに語ったりしていたのが印象的でした」
前川氏がソウルに赴任していた時期は、北朝鮮の核開発問題が大きな取材テーマとなっていた。「当時は慰安婦問題がその後、日韓関係をここまでこじらせるとは考えていなかったが、時期をみて支援団体の実態について調べて原稿を出すべきだったかもしれない」と振り返る。
※週刊ポスト2014年9月12日号