国内

朝日元ソウル特派員 慰安婦支援団体の実態を書くべきだった

 8月5日、朝日新聞は20年以上にわたって問題だと指摘されてきた「韓国の女性を慰安婦にするため強制連行した」という証言が虚偽だったことをようやく認めたが、同紙の検証は重大な疑念を残すものであり、朝日批判は鳴り止まない。そんな中、同社OBで元ソウル特派員のジャーナリスト・前川惠司氏が『朝日新聞元ソウル特派員が見た「慰安婦虚報」の真実』(小学館刊)を上梓した。前川氏は古巣の姿勢を厳しく批判する。

「朝日新聞が繰り返した強制連行証言などの報道は、国際社会での『性奴隷国家』といういわれなき批判の根拠となっており、日本の国家イメージに深刻な影響を与えているのではないか。そうした批判から朝日は目を背けてはならないでしょう」(前川氏)

 前川氏は、1971年に朝日新聞に入社。1989年から1990年にかけて韓国紙『東亜日報』に交換記者として派遣され、1992~1994年は特派員として朝日のソウル支局に勤務した。1965年の日韓国交正常化の数年後にあたる学生時代から折に触れて訪韓を重ね、2006年の退社後も朝鮮半島情勢を見続けてきた。

『朝日新聞元ソウル特派員が見た「慰安婦虚報」の真実』は、朝日新聞の内情と韓国社会の実態の双方を知る立場から慰安婦虚報の真相に迫った問題提起の書だ。

 折しも8月5日、6日の紙面で朝日新聞は〈慰安婦問題 どう伝えたか〉などと題した特集を掲載。長く専門家が虚報だと指摘してきた、「韓国の女性を強制連行した」とする吉田清治氏の証言を虚偽と認めた一方、元慰安婦の証言を意図的にねじ曲げた疑惑については否定した。

 前川氏はその紙面を、「検証記事と呼べるレベルのものではない」と批判する。日本の“クオリティ・ペーパー”が「強制連行はあった」という嘘を報じて訂正しなかったことが、慰安婦問題で日本を貶めたい勢力に都合よく利用された事実に、朝日は向き合うべきだと前川氏はいう。

「問題がここまでこじれてしまった背景には、元慰安婦のおばあさんたちが当事者能力を欠いていたこともあるようです。朝日新聞に載った吉田証言の『女狩り』などを恐らくベースにして、“人権派”と称される支援団体が、戦時中に満足な教育を受けられず、漢江の奇跡(※注)からも取り残された元慰安婦たちに、いいように振り付けをしていったのではないかという疑念が拭えません」

【※注】漢江の奇跡/1960年代以降の韓国の急激な経済成長を指す。ベトナム戦争による特需、日韓基本条約締結にあたっての日本からの資金供与などが要因とされる。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン