芸能

滝田栄 三國連太郎の壮絶役作りを聞き芝居への意識が変わる

 役者歴40年に及ぶ俳優・滝田栄が、自身が駆け出しの劇団俳優だったころについて語った。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる週刊ポスト連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 滝田栄が俳優になったキッカケは、大学時代に観た映画『アラビアのロレンス』だった。これにいたく感動したという話を同級生にしたところ、「君は俳優になるべきだ。タイプは文学座だと思う」と諭される。その言葉に誘われるまま文学座養成所を受験し、合格したのだった。

「右も左も分からない状態で始めたんですが、僕以外はみんなプロでも通用するような人たちでした。その中に三國連太郎さんの付き人をしていた同級生がいたのですが、彼が見かねて『うちへ来て、芝居の練習をしてみないか』と言ってくれまして。それで三國さんの留守を見計らってはいろいろと教わりました。

『三國さんはどういう芝居をするのか』と彼に聞いたら、『よく行方不明になる。この間も《老人を演じるのに老人が分からない》と急に現場からいなくなって、何日かして帰ってきたら《できた》と言って、歯が一本も無くなっていたんだ』と。その話を聞いて、芝居って凄い世界だと思いました。それまでは芝居を甘く見ていたのだと思う。三國さんの本気の役作りを聞いて、モチベーションが変わった。

 それで養成所の一年目が終わった時に、僕は一番出来が悪かったのに残っちゃったんです。その時、戌井市郎さんという文学座を代表する演出家に『君は芝居が上手いから通ったんじゃない。十年後二十年後が楽しみなんだ。だから十年後を見据えて勉強しなさい。今からテレビや映画に出てチャラチャラするな。大きな人間を演じられる俳優になってほしい。ついては、人間について、よく学びなさい』と言われ、ハングリーな世界に入っていきました」

 その後、滝田は1973年に劇団四季へ入団。『ジーザス・クライスト=スーパースター』のユダ役で人気を博するようになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン