ビジネス

外国人投資家 アベノミクス再評価の機運生まれ日本株に期待

 第2次安倍改造内閣がスタートした。アベノミクスの今後にも注目が中で海外の投資家たちは日本株の行方をどのようにみているのだろうか。外国人投資家の動向について詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取締役の宮島秀直氏が解説する。

 * * *
 アベノミクスに対する国内の金融市場の評価は厳しい。先の6月に発表された「新成長戦略」で、目新しい政策が無かったのが大きく影響しているようだ。

 しかし、外国人投資家のアベノミクスへの評価は違ってきている。国内での評価が下がるのと逆行するかのように高まっているのだ。その主因は、5月から6月にかけて発表された日本の経済指標の落ち込みが、想定の範囲内にとどまり、7~8月の決算発表で、日本企業の今期業績予想の上方修正トレンドが復活したことなどによる。
 
 例えば、ソロス・ファンドやブリッジウォーターといった多数のヘッジファンドを顧客に持ち、歴代の米政府最高幹部OBをアナリストに擁する調査機関『G7グループ』は、5月下旬に更新した「今後12か月間に世界経済に深刻な打撃を与える可能性のあるリスクシナリオ」の中から、『アベノミクスが失敗するリスク(=アベノミクス・デフォルト)』を消去し、世界の機関投資家の注目を集めた。

 その理由を同社のアナリストに聞いたところ、「4月の消費税引き上げ後も日本経済が大きな落ち込みをせず、成長軌道を維持する可能性が高まったため」といった回答だった。このG7グループの情勢分析を筆頭として、5月末以降、外国人投資家の間には、アベノミクスを再評価する機運が生まれ、日本株への見方も好転しているのが現状だ。

 さらに、外国人投資家を日本株に向かわせる要因として、上場企業の意識の変化も見逃せない。昨年来、株主に対する利益還元の動きが顕著となっている。

 上場企業が資本の株主還元に積極的になった事例として、外国人投資家からもよく引き合いに出されるのは、6月に「今後2年間の利益をすべて株主に配分する」という方針を出したアマダだが、すでに、昨年後半から兆候は見られた。その背景にあるのが、日本株の新しいインデックスであるJPX日経400のスタートである。ROE(株主資本利益率)を選定基準に加えたインデックスで、構成銘柄として採用されるためには、一定のROEを維持しなければならない。

 そこへ、4月に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、インデックス運用のベンチマークがTOPIXだけだったのを見直し、JPX日経400を基準にした運用を新しく選定した運用会社に委託したことで、上場企業の株主還元積極化の流れが加速した。なお、キャピタル・インターナショナルなど一部の長期投資型の外国人投資家は、すでに昨年からこうした上場企業の変化を感じ取り、ROEの引き上げに努力する企業の選別物色を始めていた。

※マネーポスト2014年秋号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン