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故・香川伸行氏 減量2キロは大便分と言われしょげたことも

「ドカベン」の異名で親しまれた元南海の香川伸行氏が、52歳の若さで逝った。死因は心筋梗塞。その人生は最期まで体重との戦いだった。

 名門・浪商高の強打の捕手として1979年センバツで準優勝、夏にも連続出場して甲子園では5本塁打を放って南海に入団した。当時の監督・広瀬叔功氏が入団当初のエピソードを語る。

「入団時から腹が出すぎて体操もできない状態。減量するよう話をしようと思い、レストランに誘ったんですが、好きなものを頼めと勧めると次々注文して食べること、食べること。“明日から減量しろよ”とはいったものの、無理だなと思いました」

 現役時代を通じて体重100キロを切ったことがないのが自慢で、入団時の健康診断では医師から「このままでは何年も生きられない」と宣告されたという。

 最高時には150キロに達した香川氏。実は本誌『週刊ポスト』との縁も深い。1987年オフには香川氏の減量入院に密着取材したことがある。

 水泳を中心としたトレーニングと徹底した食事管理で臨んだダイエットだったが、当時130キロあった体重はなかなか落ちず、1週間の入院で減ったのはわずか2キロ。担当医からは「これは腸内汚物、つまりウンチが外に出たくらいのもの」と解説されてションボリしていたが、その後も根気強くカロリー制限とハードトレーニングを続け、約2週間で7キロ減を実現。「ベルトの穴2個分」のダイエットに成功したのである。

 ダイエット中には、南海を退団した先輩・加藤英司氏のパーティーに参加。“隠れ食い”を心配されたが、

「ウーロン茶しか飲まへんかった。ごちそうを見ても、なんや体が受けつけんね。周りから“痩せたな”っていわれたんやで」

 とご満悦だった姿が本誌記者には印象的だった。

 しかし120キロ台に落としたとはいえ、体型からくる守備範囲の狭さは如何ともしがたく、ダイエット企画の2年後、27歳の若さで引退を余儀なくされた。その後は野球解説の傍ら、讃岐うどんの通信販売や居酒屋など副業に手を出したがどれも失敗。2010年には自己破産まで経験した。それでも球場には顔を出し、その笑顔と体格だけは変わらなかった。

「守備には問題があったが野球センスは素晴らしかった。本人も減量しようという努力はしていたしね。いわれたことには素直に“ハイ”といえる性格もあり、叱ってもニコニコしているので憎めなかったから、皆に愛された。それにしても52歳は早すぎるよね……」

 広瀬氏はそういうと、そっと目頭を押さえた。

※週刊ポスト2014年10月17日号

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