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脊椎圧迫骨折にバルーン利用 復元可能「経皮的椎体形成術」

 脊椎(背骨)は、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の骨から成っている。圧迫骨折は、身体を支える脊椎の前方荷重部分にあたる椎体(ついたい)が潰れる。原因は骨がスカスカになる骨粗鬆症が一番多く、転倒・交通事故などの外傷、ちょっとした前かがみの姿勢などでも起こることがある。

 圧迫骨折は胸椎の下方にある第10、11、12胸椎と、腰椎上方の第1、2腰椎といった背中の真ん中部分の骨折が多い。本来、身体を支える働きをしている場所が骨折するので、起き上がる時や起きている時に背中や腰に強い痛みが生じ、長く続く。平和病院・横浜脊椎脊髄病センターの田村睦弘センター長に話を聞いた。

「主な治療は安静か手術で、骨粗鬆症の場合は薬剤治療も重要です。コルセットで固定して、鎮痛剤を用いながら安静を保ち、場合によっては1~2か月入院し、骨が固まるのを待ちます。しかし、高齢者ですと長期安静は足腰を弱め、認知症、肺炎や尿路感染などの合併症発症のリスクもあります。また、脊椎を切開し、骨をボルトで繋ぐ手術は、身体の負担が大きいのが問題でした」

 そこで患者の負担を減らし、痛みを解消する治療として開発されたのが、バルーン利用の経皮的椎体形成術(BKP)だ。BKPは全ての圧迫骨折治療に適用ではなく、骨折したばかりの急性期や椎体が大きく潰れ扁平化したもの、神経の通り道にまで骨が飛び出しているような破裂骨折などには実施できない。適しているのは骨折から2か月以上経過しても骨が癒合せず、椎体に亀裂が入り、グラグラ動く「偽関節」になっていて強い痛みを伴う症例だ。

 BKP治療は全身麻酔で、うつ伏せになった患者の背中側から針を挿入する。そこから小さいバルーンを入れ、骨の中で膨らませ潰れた骨を持ちあげる。適切な状態になったところでバルーンを回収し、そこに医療用セメントをゆっくり充填する。

「この治療は平成24年、保険適用になりました。当初は骨粗鬆症などが原因の圧迫骨折だけでしたが、がんの背骨への転移(転移性脊椎腫瘍)にも適用が広がりました。前立腺がんで、すでに手術や放射線治療、ホルモン治療を受けていても、がんが背骨へ転移した場合、保険診療での手術が可能です」(田村センター長)

 欧米ではバルーンを使わず、骨折部に直接医療用セメントを注入する治療が一般的だ。しかし、脊椎は造血器官で血管が多く集まっているため、直接骨折部にそのまま注入する方法では血管にセメントが漏出する合併症の危険もある。

 BKPは先にバルーンを入れるので、脊椎内の組織や血管が周囲に追いやられる。十分な空間を確保してから、セメントをゆっくりと充填するので、合併症のリスクが極めて低い。現在は講習を受けた認定医のみが、治療を実施することができる。

(取材・構成/岩城レイ子)

※週刊ポスト2014年10月17日号

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