ライフ

近藤誠医師 がんよりがんを切りたがる外科医が怖い理由解説

「がんもどき理論」や「がん放置療法」など、がん治療について医療界の常識を覆す理論を提唱してきた近藤誠氏が、新刊『がんより怖いがん治療』(小学館刊)を上梓した。今年3月に慶応大学病院を定年退職した近藤氏の、がん治療医40年間の経験と知識の集大成になる。

 近藤氏は1980年代に乳房温存療法を日本に広めた第一人者だが、そのきっかけとなった米国留学時代の体験や、教授から繰り返された“肩叩き”秘話など、自伝的なエピソードも多い。氏の40年の歩みは、日本のがん治療の歩みでもあり、治療の理解を深める上で参考になる。

 たとえば、がん治療といえば、まず手術が思い浮かぶが、近藤氏は自身の研究とデータから、手術をするほど、がんの転移、再発のリスクが高まると述べている。

「手術には、『局所転移』を増やすリスクもある。『局所転移』とは、ぼくの造語だが、メスを入れた箇所にがん細胞がとりつき、爆発的に増殖することをいう。(中略)手術時にもがん細胞は血中にあって、体内をめぐっている。メスを入れられた箇所は抵抗力が落ち、血中のがん細胞がもぐり込んで増殖しやすい環境になるのである」(『がんより怖いがん治療』より)

 どんな手術でも人体への負担は大きい。メスを入れられた箇所は、体が優先的に栄養を送り回復させようと努めるわけだが、すると、がん細胞まで集まってきてしまう。その結果、手術した箇所に再発しやすくなるというのである。

 がんを告白した芸能人が手術後、記者会見で「がんはすべて切除」「完全寛解」と宣言する場面をたびたび目にする。しかし数か月後に「再発しました」というケースは多々ある。さらに再手術すれど再々発というケースも珍しくない。しかも、再発までの期間は、1回目の再発より短くなっていることが多い。こうした現象を近藤氏の「局所転移」は説明している。

 そもそも近藤氏によれば、手術は「がんより怖い」。手術には少なからぬ術死、合併症のリスクがあること、術後のクオリティ・オブ・ライフが著しく低下する恐れがあることなどを、メスを握る医師はきちんと説明しないことが多いと注意を促す。近藤氏が語る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン