スポーツ

捕手を叱った川上哲治監督「試合中には投手を怒れないんだ」

 日本一を9年間守り続けた読売巨人軍のV9時代、今でも伝説として語られる正捕手は森昌彦(現・祇晶)だ。しかしV9を達成した1973年には、森の出場試合数を二番手捕手だった吉田孝司氏が上回り「森の牙城を崩した唯一の選手」といわれた。その吉田氏が、V9を成し遂げ野球の神様と呼ばれた川上哲治監督の選手管理術を振り返る。

 * * *
 川上さんからはよく叱られました。一軍に定着し始めた頃、マスクをかぶる度に、何かにつけてベンチで「ヨシ!」と怒られた。

 川上さんに呼ばれて横に座らされると、大きな声で怒鳴られるんです。

「何であそこで真っ直ぐを放らせるんだ!」

 それは大きな声でしたよ、わざわざ横に座る意味がないくらい(笑い)。でもこの真意は、後に川上さん本人から聞かされました。僕よりもピッチャーに聞こえるように怒っていたんです。川上さんが監督を辞められることが決まった後、試合前にバッティングケージの後ろに立っている僕のところに川上さんがやってきて、こういわれました。

「ヨシ、お前にはよく怒ったな。でもオレは全部分かっているんだ。お前を叱ったが、試合中にはピッチャーを怒れないんだ。分かってくれよな」

 あの時は、ただ「ハイ」と答えただけでしたが、さすがにジーンときましたね。こっちは怒られて当然と思っていたのに、川上さんはそんな僕のことを気遣ってくれていたんですから。

※週刊ポスト2014年11月14日号

関連キーワード

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン