スポーツ

淡口憲司氏 入団1年目から川上監督の右隣で緊張してた理由

 読売巨人軍のV9時代の終盤、1970年のドラフト3位で兵庫・三田(さんだ)学園から入団した淡口憲治氏は、高卒ルーキーにも関わらず、一軍で左の代打として起用された。といっても、1年目は一軍で2打席だけ、ヒットは打てなかったが「僕には他に大事な仕事があったんです」と淡口氏は言う。その大事な仕事とは何だったのか、淡口氏が振り返った。

 * * *
 当時の僕は一軍と二軍を行ったり来たりする選手でしたが、ベンチでは座る場所が決まっていました。隅っこではありません。なんと川上(哲治)監督の真横です。

 真ん中に川上さんが座り、右隣が僕、1年先輩の河埜和正さん(※注)が左隣に座る。僕たちは川上さんのサインを三塁コーチボックスに立っている牧野(茂)さんに伝える役目を担っていたのです。

 川上さんが足を組んで貧乏ゆすりをしながら、「エンドラン」とボソッと呟いたとします。それを牧野さんに伝えるのが僕の役目。方法は、僕が「首を動かす」ことでした。

 エンドランなら顔を下に向ける。右を向けばバント、左を向けばスチールといった具合です。ですから味方の攻撃中、何もない時はじっと前を向いているんです。変に首を動かすと間違って伝わってしまいますからね。川上さんの声を聞き逃さないよう、耳を澄ましていないといけないし、ベンチでは身動き一つ取れませんでした(笑い)。

 こういうやり方ですから、自分ではちゃんと伝わったか確認できない。そこで、反対側にいる河埜さんの出番です。ちゃんと牧野さんが打者や走者にサインを出したことを確認すると、河埜さんが「いいよ」という。それでようやく元の体勢に戻れる。伝達役と確認役は、河埜さんと交代でやっていました。

 ベンチでは緊張し通しでしたね。ただ、常に川上さんの隣に座っているから、どの選手にどのような指示をするかすべて耳に入る。そうやって野球を勉強させてもらいました。

【※注】河埜和正(こうの・かずまさ)/1970年入団。強肩の遊撃手として活躍し、広岡達朗、黒江透修を上回る遊撃手球団最多出場を記録。通算.251、1051安打、115本塁打。

※週刊ポスト2014年11月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン