スポーツ

広野功 代打逆転サヨナラ満塁本塁打で祝福された思い出語る

 1965年から1973年まで9年連続日本一に輝いた巨人軍のV9時代を支えたのは、巨人生え抜きの選手ばかりではない。中日、西鉄を経て1971年に入団した左打ちの一塁手、広野功氏は代打の切り札として活躍した。1971年のヤクルト戦で「代打逆転サヨナラ満塁本塁打」を放ったときの思い出を、広野氏が語った。

 * * *
 忘れられないのは、北陸遠征、5月20日のヤクルト戦です。3対5とリードされていた9回裏、満塁の場面でお呼びがかかりました。

 この前日、僕は代打で見逃しの三球三振を喫していた。そのためこの試合ではなかなか使ってもらえず、僕以外の左の代打を使い果たした状態になってお呼びがかかりました。一塁コーチャーズボックスにいた川上(哲治)さんからも、「今日はバットを振れよ」と睨まれました。

 もっとも結果的には前日打てなくて良かったのかもしれない。相手は右アンダースローの会田照夫。本来なら左投手が出てきて「代打の代打」もありうる場面ですが、前日の凡退があるからか相手は続投させてきたのです。

 1球目は外角低めのシンカーを見逃してストライク。おそるおそる一塁を見ると、川上さんがさらに凄い形相になっている。あれは怖かった(笑い)。次はなんでもいいからとにかく振らなければと思い、2球目をすくい上げるように打つと、打球はライトスタンドに突き刺さりました。

 川上さんは大喜び。三塁コーチに立っていたヘッドコーチの牧野(茂)さんに抱きつかれるようにホームインする時には、ランナーで出ていた長嶋(茂雄)さん、王(貞治)さん、黒江(透修)さんが迎えてくれた。嬉しかったですね。

 その試合後の移動バスの中では、土井(正三)さんが“ヒーローインタビュー”をしてくれました。おどけて、「この喜びを一番先に誰に伝えたいですか?」と聞きながら、小さな声で土井さんが「(打撃コーチの)山内(一弘)さん、といえ」と囁く。その通りに答えると、バスの中がワーッと沸く。ものすごくいいチームでした。

※週刊ポスト2014年11月28日号

関連キーワード

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン