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工場バイトの前田陽子プロに目をつけていた釜本邦茂氏の先見

 シンデレラストーリーという言葉がぴったりのニューヒロイン誕生に、ゴルフ界が沸いた。女子ゴルフ「伊藤園レディス」(11月14~16日)で初優勝を飾ったプロ9年目の前田陽子(29)である。

「試合に出られないときは段ボール工場で働いていた」と告白したことで、一気に注目された。複数のゴルフ誌が「ヘルメットをかぶったバイト姿での取材」を申し込んだが、「今年は1回も行っていないし、恥ずかしいから」と断わられたという。

 前田は今年はQT(プロゴルフツアーで、ツアー本戦の出場資格を持たないプロゴルファーが参加する予選会)上位の資格でツアーに出場しているが、

「ほとんどの試合が“裏街道組”(※注)だったので、前田のゴルフを知る記者がなくノーマークだった」(ゴルフ誌記者)

【※注】大会でインコース(10番ホール)からスタートする選手のこと。注目度の高い人気プロからアウト(1番ホール)スタートとなることが多く、ほとんどの記者やカメラマン、ギャラリーはアウトスタートの選手に帯同する。

 無理もない。5度目のプロテストで合格した2008年以来、レギュラーツアー出場は昨年まで4試合のみで、生涯獲得賞金はたったの73万8000円だった。前田のバッグを担いだことがあるプロキャディの話。

「ドライバーの飛距離は出ないが確実にフェアウエーに置く。セカンドもグリーンセンターを狙う丁寧なゴルフをする。確かに堅実で地味なゴルフだから、華はなかったですね(笑い)」

 ところが、この無名プロに早々から目をつけていた意外な人物がいた。「世界のカマモト」こと、元サッカー日本代表でメキシコ五輪得点王の釜本邦茂氏だ。

 ゴルフが趣味の釜本氏は年に数回チャリティコンペを主催しているが、そこに前田プロを4年前から招待していた。釜本氏が語る。

「私の息子と前田プロの妹さんが知り合いだったんですよ。その妹さんから“姉はプロになったが試合に出られないので、工場でバイトをしながら練習している”という話を聞いていた。

 そこで少しでもラウンドの経験を積む助けになればと、コンペに招いたり、私が理事長をする京都のゴルフ場で収録するゴルフ番組のゲストに来てもらったりしていたんです。そういう時はお礼として地元の徳島から酢橘を持ってきてくれるような良い子ですよ。

 とにかくコツコツ頑張るタイプ。今年は33試合に出たものの予選落ちが12試合あり、予選を通ってもギリギリだったから、来年またバイトかなと心配していた。諦めず、真面目に頑張ることが大切なんだと私も教えられましたね」

 前田プロにも話を聞いた。

「これまで支えていただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。釜本さんにも本当にお世話になりました。地道に頑張っていてよかった。とりあえず来年はバイトのことを考えなくて済みます(笑い)」

 今大会で獲得した優勝賞金は1800万円。努力は裏切らない。

※週刊ポスト2014年12月5日号

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