第二シリーズでは、問題児の転校生・加藤優(直江喜一)を巡る暴走族のエピソード「腐ったミカン」が話題になった。
「ロケに行くと、優にファンが付いているんですよ。それが本物の暴走族。自分たちの代表として優を見ていて、ライバルの悟を殴ろうとしたりするんです。子供たちに何かトラブルがあったら自分のせいだと思っていました。ですから、引くとナメられると思いましてね。
彼らが騒いで撮影の邪魔をしようとした時は、強気のところを見せようと『一生懸命に芝居をしているんだから、少し静かにしてくれるかな』と注意したんです。そうしたら『おい、金八先生が頼んでるから静かにしようぜ』と彼らも聞いてくれました。
あの衣装を着ている間はスーパーマンと同じなんです。誰も『武田鉄矢』と呼ばずに、『金八先生』と呼ぶ。ですから、金八としてはロケ現場でも動かなきゃいけないんですよ。
優には怒鳴りまくりましたね。あいつがまた力むんですよ。いいセリフなのに、物凄く力んで言うから浮いちゃうんです。それで、アイツをセットの裏に連れていって、『セリフがカッコいいから、カッコいい顔なんかしなくていいんだ。正直に言えば、上手くいくから』って、以前に山田監督から言われた言葉をそのまま彼に伝えました」
●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書)ほか。最新刊『時代劇ベスト100』(光文社新書)も発売中。
※週刊ポスト2014年12月5日号