スポーツ

V9巨人の守備職人 「長嶋さんと守った三遊間は驚きの連続」

 一塁・王貞治、二塁・土井正三、三塁・長嶋茂雄、遊撃・黒江透修。時代を代表する選手が揃っていたV9巨人の内野陣は圧倒的な実力もさることながら、ケガに滅法強く、ほとんど試合を休むことがなかった。そこに控え選手が入り込むには“特殊技能”が必要となる。内野の4ポジションすべてを守り、V9 後の長嶋監督にも重宝された守備職人、上田武司氏が長嶋氏と三遊間を守った思い出を語った。

 * * *
 長嶋さんとは何度も三遊間を守りました。長嶋さんは僕らとは違う独特の“勘”の持ち主でした。

 甲子園での阪神戦で、ピッチャーは高橋一三。試合中、長嶋さんが、「おい武司、もっと三遊間に寄れ」といってきました。指示されたのは、定位置からかなり離れた場所だったので僕が戸惑っていると、長嶋さんは「もっとだ!」と、ほとんど三遊間のど真ん中の位置を指示してきました。

 こっちが躊躇しながら移動して守っていると、そこにドンピシャで打球が飛んできたんです。長嶋さんは「そーら見ろ」と満面の笑みを浮かべていた。相手の打者の打球が、高橋のシンカーを引っかけて三遊間のその場所に来ることが分かっていたというんです。

 こんなこともありました。長嶋さんは足の速いバッターが打席に入ると、わざとベースより後ろに守備位置を下げてじっとしているんです。ベンチから「もっと前に出ろ」と指示が出ても、まったく無視です。

 だがピッチャーが投球を始めると、同時に猛ダッシュする。バッターがセーフティバントしたボールを捕球して素早く一塁へ送球してアウト。スタンドは拍手喝采です。長嶋さんはどうやればお客さんが喜ぶか、そればかり考えてプレーしていたんじゃないでしょうか。普通ならエラーをしたくないと緊張して、そんな余裕はありませんよ。

※週刊ポスト2014年12月5日号

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン