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「病院は薬漬け」との批判あるが薬は不要論は無責任と薬剤師

 病院にかかると何種類も薬を出されることがある。その量の多さに辟易し、「これって本当に必要なの…?」と疑問に思うことが多いのではないだろうか。

 そうした疑問を持つ人たちにとって“薬はいらない”、“薬をのまないほうが健康になる”という論は注目すべき新説なのかもしれない。「薬は体の分解酵素を破壊し、副作用で苦しむ人もいる」と危険性を主張されると、薬から足が遠のくのは必然だ。

 だが、薬剤師の堀美智子さんは“薬離れのリスク”を危惧する。

「薬について、総論で『いる』『いらない』の2択にするのは大きな間違いです。薬は効果があることが実証されています。

 例としてわかりやすいのは高血圧など生活習慣病です。1948年から開始された米国のフラミンガム地区や1961年から開始された福岡県久山町の人を対象にした血圧などのさまざまな検査や解剖のデータをまとめて解析したものがあります。

 また1966年から1992年にかけて欧米で行われた17の降圧治療をまとめたものによれば実際に薬をのんだ(実薬群)2万3487人と偽薬を投与された(偽薬群)2万3806人が比較されました。その結果、脳血管障害の発症率(1年間あたり)は実薬群が1000人あたり4.8人に対して、偽薬群は7.5人。実際に薬をのんだ人の方が少ないとわかりました。心筋梗塞など心血管障害についても、1000人あたり1.4人少なく、死亡率も同1.6人少ないため、薬によって病気の発症率を減らし、死亡率を減らしていることがわかります。

 また、ヨーロッパのスカンジナビア地方でコレステロールが高い高脂血症患者4444人を対象に投薬により治療した群としなかった群を平均5.4年追跡した調査では投薬により治療した群のほうが生存率が高く死亡リスクが約30%低下したとされています」

 堀さんが強調するのは、「その人にとって必要な薬とそうでない薬を整理すること」の重要性だ。

「人の体は個々に違います。同じ病気になっても、薬が必要な人と不要な人がいるでしょう。それを自分で判断することは難しい。勝手に『いらない』とのむのをやめてしまうのは危険な症状に陥る可能性があります。薬について疑問を持ったら、医師や薬剤師に相談し、そのうえで判断しましょう」

※女性セブン2015年1月8・15日号

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