国際情報

中国の影響力増す香港 チベット・ウイグルと同じ転落を危惧

 中国の習近平・国家主席は、昨年の9月下旬から香港の繁華街を占拠していた学生や民主派グループの強制排除を梁振英・香港行政長官に厳命するなど、いまや香港政府は完全に北京の支配下に置かれた。

 中国当局の最大の標的の一人が、反中的な姿勢を貫く現地紙「リンゴ日報」の創設者、黎智英氏だ。中国当局は今回の運動の背後に「海外の民主派勢力がいる」と喧伝する。その仲介役が黎氏だというのだ。

 中国系テレビ局ATVの劉瀾昌・高級副総裁(報道・広報担当)は、「黎氏は2億5000万香港ドル(約37億5000万円)もの金を活動グループに寄付したが、その出所は隠している」と非難した。かねて中国当局が目の敵にする米政府系民主化団体が資金源であることを疑っているのである。

 黎氏は占拠運動で逮捕されたあと、同紙社長を辞任して台湾に渡った。劉氏は「彼の経済基盤は弱い。このまま社会的に葬り去られる可能性もある」という。

 世界的に活躍するチャイナウォッチャー、林和立・香港中文大学教授は、

「香港では中国の影響力が強くなり、個人の自由が制限され始めた。このまま進めば、中国における自由と民主主義の先駆者であった香港が、チベット自治区や新疆ウイグル自治区と同じような弾圧の象徴に転落することも考えられる」

 と危惧する。確かに香港に対する中国政府のやり方は、規模や手法の違いこそあれ、チベットやウイグルと似ている。

 香港では両自治区同様、返還後に中国人が大量に移住し、すでに100万人が居住して“中国化”が社会全体で進んでいる。

 香港株式市場上場1500社のうち4割を占める600社は中国から進出した企業で、経済の大陸支配も浸透してきた。

 そして政治的には、自治・独立を名目にしながら実際には北京の傀儡化を図り、それに反対する民主派・独立派は武力と諜報活動によって排除する。中国共産党がやり慣れた弾圧・支配のシナリオである。

 習氏はマカオ返還15周年記念式典で、「中国政府は香港、マカオの『一国両制』(一国における社会主義と資本主義の共存)を守るが、“一国”の原則は堅持すべきだ」と述べて、「香港もマカオも中国の領土」と強調した。

 民主派がこれ以上騒ぐならば一国二制度さえ破棄するという脅しである。

●文/相馬勝(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2015年1月16・23日号

関連記事

トピックス

昨年、10年ぶりに復帰したほしのあき
《グラドル妻・ほしのあきの献身》耐え続けた「若手有望騎手をたぶらかした」評 夫・三浦皇成「悲願のG1初制覇」の裏で…13歳年上妻の「ベッドで手を握り続けた」寄り添い愛
NEWSポストセブン
東京・表参道にある美容室「ELTE」の経営者で美容師の藤井庄吾容疑者(インスタグラムより)
《衝撃のセクハラ発言》逮捕の表参道売れっ子美容師「返答次第で私もトイレに連れ込まれていたのかも…」施術を受けた女性が証言【不同意わいせつ容疑】
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
白鵬に賛同する勢力がどんどん増えていく
《元横綱・白鵬のもとに“ヤメ関取”が続々集結》元・旭鷲山、元・把瑠都が役員になった国際相撲連盟と「世界相撲グランドスラム」構想の関係
週刊ポスト
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン
愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン