そんなに長い報告文じゃないのに、えっそこまで詳細に明かしていいの?と思わされるほど情報が深い。<学生が落ち着いてからこの間の事情を聴取し調査をいたしましたが、事実関係についてはこの通りであることを確認いたしました。>と裏取りもしっかりしている。当該講師氏による大正大学の学生向けメッセージも掲載した上で、次のように見解を述べる。
<本学では今回の事案に関して、関係部署等で慎重な検討を行うことを指示し、当該講師の行為の動機に関しては同情すべき点があることを確認しました。しかしその動機のいかんにかかわらず、行為の結果に責任を取るということで当該講師と同意いたしましたので、辞表を受理いたしました。>
さらに、学長は組織の指揮官として、こう念を押す。
<このような行為は、学内の諸規定に抵触するかを問う以前に、社会人としての良識が問われます。そのことも踏まえ、学生、教職員に本学の建学の精神にもとづく行動をあらためて要請いたします。
なお今回の事案に関係した学生への指導に鑑み、当該学生の詳細な情報を秘匿し、保護することをご理解ください。>
カンペキな説明責任の取り方と内部情報の管理だ。私はいい意味での家長権のようなものを感じたが、堂々とした対応の仕方に感銘を受けた人が大勢いて、ネット上では「大正大学ってとてもいい大学なのでは」といった評価がたくさんなされていた。
この報告文は大正大学の公式HPに残されている。組織の長や広報に携わる人は、ぜひ参考にされたらいいと思う。ポイントは、対応の迅速性と明解なファクトの確認、そして職責に対するぶれない態度である。
マクドナルドの場合は、社長が海外出張中とかで取締役2人が記者会見に応じていたが、「ヒトゴトみたい」と思われてしまったのは、彼らの表情がいかにもそんなふうだったからだ。本当はプレッシャーで顔が強張っていただけかもしれないが、世間はそんなに甘い見方をしてくれない。であれば、下手に顔出しなどしないで、大正大学の場合のようにビシッと文書で説明責任を果たすというやり方もあったのではないか。
中年男の裸体という絵面にはかなりのインパクトがあったけれど、学長の文はそれを上回る力強さを読む者に伝えた。心を動かすビジネス文書のお手本を見せてくれた、とも言えるだろう。