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安倍首相が現時点では決して憲法改正を国民投票にかけぬ理由

 憲法改正について、大事な話を言っておきたい。国民の間には「安倍政権が憲法を改正する」かのような受け止め方があるが、それは誤解だ。憲法を改正するのは政権ではなく、国民である。国民投票の過半数で改正が決まる。

 政権与党にできるのは、衆参両院で3分の2以上の賛成を得て国民投票にかけるところまでだ。安倍政権は仮に来年7月の参院選で3分の2以上を得たとして、本当に国民投票にかけるだろうか。私は現時点の世論を見る限り「かけない」とみる。

 なぜかといえば、いま国民投票にかけても過半数の賛成を得る見通しがないからだ。たとえば、NHKの世論調査で改正賛成は33%にすぎない。反対が29%だ(2015年1月)。読売新聞調査でも賛成42%、反対41%と拮抗している(2014年2月)。

 国民投票で負ければ、安倍政権は内閣総辞職だろう。これほどの重要案件で国民に「ノー」を突きつけられたら、もう仕事は続けられない。そこで話は終わらない。おそらく日本は2度と憲法改正の機会を失ってしまう。

 それは昨年、住民投票による独立達成に失敗したスコットランドのようなものだ。だから、これは安倍政権にとって国民投票にかけると決めたら最後、絶対に勝たなくてはならない話なのだ。

 いま国民世論がそういう段階にあるかどうか。これこそ安倍首相が冷徹に見極めねばならない政治情勢である。おそらく安倍は「絶対に勝てる」と思っていない。だからこそ「国民の理解を深める必要がある」と繰り返し強調しているのだ。

■文/長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年 新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年2月6日号

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