一方、原油投機のヘッジファンドなどはスーパータンカー(超大型石油タンカー)を仕立て、原油を安値で買い漁って満載し、価格が再び上昇するのを待ち受けている。
つまり、石油メジャーやヘッジファンドのように、一見原油安で損しそうなプレーヤーほど、長期的に見れば利益を得る仕組みになっている。原油価格が上昇に転じるとしたら、地政学的なリスクが高まったときである。
彼らは原油価格の下落でロシアが窮地に陥ることも織り込み済みだ。ルーブル安によるインフレで国民生活は苦しくなり、プーチンに対する支持率は低下しつつある。支持率回復のため、新たな戦争を始める可能性は十分ある。
火種はそれだけではない。サウジが減産しないのは、シェール潰しではなく、産油国内の主導権争いが理由だ。
サウジの「20ドルまで下がっても減産しない」という宣言は、他の産油国に対する恫喝だ。現実にそこまで下がると、余裕のあるサウジと違い、他の産油国は経済的に困窮する。暴発の危険があるのはイランで、サウジとの間で紛争が起きても不思議ではない。
紛争により原油価格が上昇すれば、石油メジャーが傘下に収めたシェール企業は再び利益を出し、投機筋もぼろ儲けできる。別に意外な話ではない。似たようなシナリオは過去に何度も繰り返されてきたのである。
※SAPIO2015年3月号