ビジネス

就活の専門家 女性作家の就活小説読み「超絶面白い」と驚く

 就活をテーマにした小説が誕生した。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が激賞する。

 * * *
 超絶面白い本と出会いました。採用活動の現実がわかる小説です。『あの子が欲しい』(朝比奈あすか 講談社)がその本です。著者の朝比奈あすかさんは第49回群像新人文学賞の受賞者ですね。いくつかの新聞の書評欄で紹介されていたので、気になって購入しました。

 この本は新進のIT企業である株式会社クレイズ・ドットコムに勤務するヒロイン川俣志帆子が、採用チームの仲間とともに取り組む様子が描かれています。

 この「小説」、本当は「ノンフィクション」なのではないですかね? 読んでみて、いきなり、そんな「文句」を言いたくなりました(冗談です)。それくらいリアルに今どきの採用活動と就活、採用担当者と学生を描いています。あまりにも採用活動・就活の「あるある話」がいっぱいで、最初から最後までニヤニヤしながら読んでしまいました。

 採用活動のために、2ちゃんねるなどのネット掲示板を覗く、時には書き込みをして話の流れを変える、Twitterのフォロワー数を増やそうとするなど、ネット時代の採用活動でよくあるシーンも生々しく描かれています。「そんなこと、しているのかよ?」とか「所詮、小説だからでしょ?」と思うかもしれませんが、いえいえ、全部よくある話なのですよ。

 最後の方に出てくる、この企業の合格者数、内定受諾者数、内定辞退者数なども、本当にこの業界、規模の企業でよくありそうな数字で、びっくりしました。本当の数字を持ってきたかと思いましたよ。

 ネタバレになりますので、多くは語りませんが、終盤の学生を口説き落とすための心理戦は圧巻です。なんとか「ウチの会社」に来てもらうための駆け引きですね。これもですね、よくあることなのですよ。さらには、最後には、いわゆるFランク大学に通う学生が、行きたい企業の内定に至るための裏ワザ(いや、正攻法の直球勝負とも言えますが)も紹介されています。お楽しみに。

 採用担当者の私生活の描き方も、いま採用に関わっている20代、30代女性にいかにもありそうな話で、リアルでしたよ。

 前述したように、「小説じゃなくて、ノンフィクション、ルポルタージュみたいだな」と思いました。作り話っぽいところがひとつもないのです。でも、小説形式で描くことにより、採用担当者と学生の思惑、心理状態などがよくわかります。学生の立場からだと、理不尽に思えるようなことがなぜ行われるのかも、ストーリーで読むと、理解できるかと思います。

「採用担当者も大変なんだ……」そんなことがよくわかる本なのです。そうなんです。採用担当者は、日々、学生と真剣に向き合わないといけないですし、ネット上の噂もチェックしないといけませんし、社内調整もありますし、なんせ、学生や他社との駆け引きなどもあり、もう大変なのですよ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン