地元選出の岸田文雄・外相が核軍縮・不拡散外相会合を開催した実績をひっさげて誘致に手を挙げた。すでに外務省筋から、「『核なき世界』を掲げてノーベル賞を受賞したオバマ米大統領は、任期最後のサミットで広島を訪問し、世界平和を訴える演説をしたいと希望している」という情報が流されており、岸田外相も、「世界の政治指導者が被曝の実相に触れる意義は大きい」と、“外圧”を最大限に利用しようとしている。
だが、外務省は各候補地の評価報告書を首相に提出する立場である。行司役の岸田氏がまわしをつけて土俵に上がるのだから、八百長相撲もいいところだ。
8都市の中で最も早く誘致活動を始めていたのが軽井沢だ。2008年に行なわれた洞爺湖サミットが開かれた7年前から「2016年開催地」を目指してきた。昨年からは町内の小中学校と幼稚園でG8各国の料理をメニューにした「サミット給食」を始め、誘致マーク入りのジャムやミネラルウォーターの販売など、誘致活動を地域創生につなげてきた。
弱点は長野が「民主王国」のため自民党有力議員がいないこと。そこで阿部守一・長野県知事や地元経済団体のトップが大挙して上京し、菅義偉・官房長官や谷垣禎一・自民党幹事長、山口那津男・公明党代表らに要望書を配るローラー作戦を展開した。同県幹部は「外務省から内々に首脳会議のプレスセンター用に1万3000平方メートルのホールを準備するよう指示があった」と誘致の自信を深めている。
開催都市は今年6月にドイツで開かれるエルマウ城サミットで正式発表される。
※週刊ポスト2015年3月6日号