ビジネス

アマゾンの配達 佐川急便が手を引きヤマトが引き受けた理由

「日本最大の成長産業」とも言われる宅配業界を牽引してきたのが、最大手のヤマト運輸であることは間違いない。しかし、その盟主もまた、急成長に伴う「痛み」に苦しんでいる。いま、この国の経済を支えてきた宅配システムが、大きな岐路を迎えている。ジャーナリストの横田増生氏がレポートする。

 * * *
 私が取材して回ったヤマトのセールス・ドライバーからは次々と労働環境に関する悲鳴が聞こえてきた。時間指定や代引きなど顧客へのサービスが付け加わるたびに、現場の負担は増える。さらにヤマトホールディングスが二〇一三年に発表した〈バリューネットワーキング構想〉では、二〇一七年をメドに東京~名古屋~大阪間の荷物を当日配達できる仕組みを作るという。

 業界全体の荷物量はほとんど右肩上がりで増えているのに加え、ヤマト運輸の物量は、佐川急便が二〇一三年春、アマゾンとの取引を打ち切ってから一段と増えた。
 
 関西のセンター長・近藤光太郎(仮名)は、二〇一三年春以降、それまでの荷物に、アマゾンの荷物が一日当たり二〇個増えた、という。
 
「朝の時間指定が、約一〇〇個から一二〇個に増えました。配達に毎朝、一時間余計にかかるようになりました」
 
 ヤマト運輸がアマゾンの業務を引き受け、佐川急便がアマゾンを切ったのは両社のビジネスの構造上の違いが理由だ、と物流コンサルタントの刈屋大輔は説明する。
 
「佐川の場合、住宅地に配る宅配荷物の多くは、下請けの軽四トラックに一個百数十円で委託するので、なかなか儲けが出なかったのですが、ヤマトの場合、自社のドライバーが運べば、外注費が発生しないためアマゾンの仕事を引き受けることができたんです。その分、ヤマトのドライバーの負担は重くなるのですが」
 
 つまり荷物増とサービス向上の裏で、ヤマト運輸のドライバーの負担が増し、疲弊しているという構図が見える。
 
 私は、ヤマト運輸で一〇年近くセールス・ドライバーをしている金井高志(仮名)に入社当時の仕事量を一〇〇とした場合、現在はどれぐらいかと尋ねてみると「一三〇に増えた」との答えが返ってきた。社歴の長い前出の近藤に同じ質問をすると「一五〇」という返答だった。他の複数の一〇年以上働くドライバーに訊くと、異口同音に「一五〇」という答えが返ってきた。

※SAPIO2015年3月号

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン