国内

ヤクザが台湾人襲撃から警察署守り山口組組長が一日消防署長に

 警察とヤクザ。世間的には対立するはずの両者はその実、戦後の長い期間ある程度の「共存関係」にあった。警察は自らの権力拡大のためにヤクザを利用してきたという裏面史を評論家の宮崎学氏が語る。
 
 * * *
 戦後、ヤクザは警察権力と密接につながり、持ちつ持たれつの関係を築いてきた。

 とりわけGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)占領下の日本では、警察よりもヤクザの力が強かった。GHQにより武装が制限された警察は、戦後の混乱期に台頭した朝鮮人や台湾人などの武装勢力を抑えきれず、治安維持もヤクザに頼らざるを得なかったのだ。

 典型的なのが「渋谷署事件」であろう。1946年、闇市の取り締まりに不満を抱いた在日台湾人を中心とするグループが渋谷署の襲撃を計画。

 情報を察知した警察は「愚連隊の神様」と呼ばれた万年東一(まんねんとういち)氏率いる武装部隊に応援を要請し、これを迎え撃った。警察をヤクザが守るという、今日では到底信じられない事件は東京だけでなく、山口組の本拠・神戸でも見られた。

 その後、朝鮮戦争を機に軍需物資の輸送に伴う港湾労働の重要性が増し、港湾を支配してきた山口組をはじめとするヤクザの勢力が拡大した。

 山口組組長・田岡一雄氏は公的機関である「神戸港船内荷役調整協議会」の委員に選ばれ、1959年には神戸水上消防署の一日署長を務めたほどだ。

 また、60年安保を巡って警察では手に負えないほど左翼勢力が勢いを増す中、当時の自民党政権は、ヤクザが左翼を封じ込める「反共抜刀隊」構想まで密かに練っていた。結果的には表面化しなかったが、それほど当時のヤクザは重用されていたのである。

 この当時は警察官のヤクザへのタカリも常態化していた。

 ヤクザの組長だった私の父のもとには、小遣いをタカリにくる警察官が後を絶たず、私の家にタダで寝泊まりする輩もいた。ヤクザが経営する飲み屋に頻繁に顔を出し、タダ酒をごちそうになる警察官もごまんといた。

 1964年以降、組のトップを重点的に検挙する「頂上作戦」が3度にわたって仕掛けられたが、それでも根本的な掃討作戦にはつながらなかった。いくら山口組撲滅を掲げても、肝心の神戸では山口組が毎年の方針を打ち出す「事始め」に所轄の警察署長が列席していたのだから、それも当然の話である。そんな“なあなあの関係”が続いていたのだ。

※SAPIO2015年3月号

関連記事

トピックス

石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン