大平氏は2010年9月、大手自動車メーカーで最年少役員となったA氏を迎え入れ、実質的なナンバー2に据えた。だが、A氏が経営で独自色を打ち出そうとすると、「農業も、キノコも何もわかってないのに」と大平氏は不満を抱くようになり、2013年6月の株主総会でA氏を退任させた。それに反旗を翻したA氏は金融庁、東証、取引銀行へ大平氏の不適切な会計処理を内部告発した。
その結果、大平氏は社長退任を余儀なくされた。しかし、株の過半を握るのは創業家である。昨年6月、「経営に関与しない」はずの大平氏が株主総会を操り、怒号が飛び交うなか、「反大平派」の役員を降ろし、代わりに自動車大手「ホンダ」出身の鈴木克郎氏(現会長兼社長)らを役員に送り込んだ。
ところが事態はさらに混乱してゆく。大平氏が送り込んだ鈴木氏ら新役員が「反大平」に回ったのだ。大平氏にとっては裏切りである。大平氏は再度、株主権を行使して役員を送り込み、支配権確立のチャンスを窺っていた。
時期到来と考えたのが昨年末だ。一部の株主が臨時株主総会の開催を迫ると、会社側との対立が決定的になった。そして鈴木会長兼社長と銀行団が「ホワイトナイト(白馬の騎士)」としてベインキャピタルを招くに至ったのだ。
銀行団が担保権を行使して株式を取得した2月24日の段階で、筆頭株主は創業家から銀行に移った。TOBは20日の終値(207円)を18%上回る1株あたり245円で4月6日まで実施されるが、成立はほぼ確実だ。
※週刊ポスト2015年3月13日号