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安倍首相が視察の仮設住宅居住女性「中入らないで何わかる」

 首相就任以来、安倍晋三氏はほぼ月1回のペースで20回以上にわたって被災地視察をしてきた。とはいえ、仮設住宅視察には批判がある。岩手・釜石市の仮設に独居する80代女性の言葉は辛辣だ。

「安倍さんは来るには来たけども、車を降りてほんの100メートルくらい歩いてすぐに行っちゃった。時間にして3分あったかどうか。何人かは握手してたみたいだけど、中にも入らないで何がわかるもんか。仮設を視察したといいたいだけのパフォーマンスに見えました」

 キッチンと四畳半一間だけの女性の部屋に上がらせてもらった。たんすや仏壇などを並べると、ほとんど生活スペースはない。寒さが骨身にしみるが、夜はこたつとストーブを片づけて布団を敷くという。

 そもそも建築基準法や災害救助法で仮設住宅の長期使用は原則2年間と定められている。4年経ったいま、住宅の老朽化は避けようもない。さらなる問題を石巻市の庄司慈明・市議が指摘する。

「プレハブの仮設住宅は高気密・低断熱という特性があり結露がひどく、カビが大量に発生する。石巻のある仮設住宅では通常の160倍以上のカビ胞子が検出され、喘息の発生率が2倍近くになりました。総理がせっかく仮設住宅を視察するのなら部屋の中に入り、そういった実態を自分の五感で感じるべきです」

 被災地の首長も視察場所について疑問を呈している。震災当時の町長が津波で死亡するなど壊滅状態となった岩手・大槌町の碇川豊・町長は、町の公式サイトに「町長随想」と題して次のように綴っている。

〈これまで安倍晋三総理大臣に大槌町へ足を運んで頂くことについて関係者に強く要請してきた。(中略)視察場所については、復興庁が決めたもので町には相談がなかった。私としては復興が遅れている場所も視察して頂きたかったが、公務多忙の時期に大槌町のためにだけ日帰りで来訪していただくことを考えると欲も言えない〉

 地元自治体の歯がゆい思いが伝わってくる。

※週刊ポスト2015年3月20日号

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