今年の1月にエキサイトニュースに掲載された「立ち食いそば上級者はなぜ『コロッケそば』を頼むのか?」は、〈お恥ずかしながら、人生で数回しか立ち食いそば屋を利用したことがない〉というライターが、立ち食いそば通たちのうんちくを紹介、考察したものだ。これもよく読まれている。
ネットだけではない。紙の出版界でも去年の6月に『立ち食いそば名店100 首都圏編』というムックが刊行され、その後も10月にムック『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』、今年の2月に『全国駅そば名店100選』という新書が出ている。ラッシュとまでは言えないが、ブームの兆しのような気配はある。こうして情報が増えていくと、年内にでも本当にブームがおきるかもしれない。
関連記事をいろいろ読んで、いいなあ、と思ったのはその肩の力の抜け加減だ。麺や汁や具をめぐる激論がすぐにおきるラーメンの世界のようなことにはなっていない。店ごとの個性はいろいろあっても、いい意味で「たかが立ち食いそば」。今のところ情報の発信者たちは、そんな気楽なスタンスを共有しているように思える。
私がハマっている「全力そば」は、企業のビジョンに相当する、次のような店の「コンセプト」を3つ掲げている。
・茹で麺を使用することによる時間の短縮。
・お客様に気安く来ていただけるようにとの思いで、小盛りそば(普通サイズの半分)100円での販売。
・天ぷら30種類による美味しさへの挑戦。
それが立ち食いそば店の「王道」と店主のオヤジさんは言いきる。この庶民感覚こそが魅力なのだ。ちなみに、「全力そば」の実際は、客のリクエストでどんどん天ぷらの種類が増えており、現在50種以上はあると思われる。