国際情報

中国・清王朝が「尖閣諸島は日本領土」と認めた公文書を発見

中国が「尖閣は日本領」と認めた公文書

「尖閣諸島は古来中国固有の領土であり、日清戦争を機に日本に奪われた」──そんな論理で領有権を主張する中国を論破する史料が新たに見つかった。清王朝時代から「尖閣諸島は日本の領土」とみなしていたことを示す「中国側の記録」である。

 外務省は3月16日、中国政府が1969年に発行した、尖閣諸島を日本名で表記した地図を同省ホームページに掲載した。尖閣諸島が歴史的、国際法的に日本領土だと証明する数々の「動かぬ証拠」はこれまでも複数知られているが、またしても中国の主張を根底から否定する史料が公になった。

 外務省の公表に対し、中国は「1、2枚の地図を探したところで歴史的事実は覆せない」、「必要ならば釣魚嶼(尖閣諸島・魚釣島の中国名)が中国に属すると明確に表記する地図を100枚でも1000枚でも探し出せる」と反発した。

 しかし、重要なのは枚数ではなく、その史料が信用に足るかどうかだ。その意味で、外務省が地図を発表したのと前後して発見された史料は強い説得力を持つ。

 その史料とは、外務省外交史料館に所蔵されていた「井澤弥喜太外二名、清国へ漂流したる節、救助したる同国地方官へ謝意伝達之件」と題した日本人の遭難記録である。1893年のもので、日清間の往復書簡など計9通からなり、熊本県在住の井澤ら3人が石垣島からアホウドリ捕獲のために「胡馬島」へ向かう途中で遭難し、清国に漂着した経緯が記されている。

 注目すべきは9通目の書簡だ。清国の地方官に保護された井澤らは上海経由で日本に移送された。その後、当時外務大臣だった陸奥宗光の命を受けた上海総領事館が、地方官に謝意を伝える公文書を作成し、福建省海防官に送った。9通目の書簡は、その公文書を清側が受領、了承したことを日本政府に返信したものである。

 一連の記録を発見、解読した長崎純心大学比較文化学科の石井望・准教授が解説する。

「清国側の対応は『茲准前由、除呈報移行外』(ここに上述の通り、各地方官に報告及び通知する)というものでした。史料に登場する『胡馬島』とは、当時刊行された『南島探験』などの書物から、尖閣諸島の魚釣島を指すことがわかっています。

 仮に清国が尖閣を領有していたのなら、井澤らが渡航しようとしたことに対して何らかの抗議をするはずです。その形跡が見られないということは、清国が尖閣諸島を自国の領土とは見なしていなかったことの証左なのです」

写真■外務省外交史料館所蔵

※週刊ポスト2015年4月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン