ビジネス

患者に2.5倍の薬代払わせる「医薬分業」のトンチンカン規制

 大手ドラッグストアチェーン傘下の調剤薬局「くすりの福太郎」が「薬のカルテ」と呼ばれる薬剤服用歴(薬歴)を記録管理せずに、患者に薬を出していたニュースを覚えているだろうか(2月10日に発覚)。

 調剤薬局が患者に薬を出すときは薬歴を残すことが薬事法で義務付けられている。病歴や薬のアレルギー、症状などを管理して安全に薬を提供するためだ。

 薬歴管理で薬局は1件当たり410円の調剤報酬を受け取っている。未記録は少なくとも17万件余に上ったというから、7000万円強を不正に得ていた形である。

 このニュースの裏側には、実はもっとひどい話が隠れている。いまの医薬分業の下で、患者は不当に高すぎる薬代を払わされているのだ。

 病気や怪我で街の診療所や病院に行く。すると患者は薬の処方箋を受け取るだろう。患者はそれを手に院外の薬局で薬をもらう。昔は院内薬局で薬をもらう場合が多かったが、いまは医者が院外処方箋を出すのが普通になった。

 どうしてそうなったかといえば「薬漬け批判」が高まったからだ。医者が薬局も経営していると、薬を出せば出すほど儲かるから、患者が薬漬けになりやすい。そこで政府は薬局を切り離すように金銭で誘導する政策を採用した。

 医者に支払う処方箋料を1974年に1件100円から500円へ5倍に引き上げたのだ。これで爆発的に院外薬局が増えた。同時に、患者や健康保険から薬局に支払われる調剤報酬も手厚くした。

 その結果、患者が負担する薬代はどうなったか。診療所や病院で薬をもらう院内処方に比べて、外の薬局で調剤してもらう院外処方は実に2.5倍以上も高くなってしまったのだ。具体的に示そう。

 内服薬7日分で院内処方なら薬剤情報提供料とお薬手帳の記載加算、調剤料、処方料、調剤技術基本料で計720円だ。ところが院外処方だと処方箋料、調剤料、調剤基本料、薬剤服用歴管理指導料で計1850円になる(規制改革推進室調べ)。

 このうち「薬剤服用歴管理指導料」を管理も指導もしていなかったのに受け取っていたのが冒頭のケースだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン