知る人ぞ知る専門誌・業界誌の世界──。今回紹介するのは、靴の専門誌『フットウエア・プレス』です。
【『フットウエア・プレス』】
・創刊:1971年
・月刊誌:毎月1日発売
・部数:1万部
・読者層:小売業、卸売業、製造業、資材業の人たち
・定価:1748円
・購入方法:発売元のエフワークスに直接注文。
・最近の好評企画ベスト:1位→女性の目線で取り組む商品、店舗開発、売場接客/2位→どこの売り場で何が売れているか。店長に聞く/3位→アジアの産地と起用法
「女性は靴が好き。ブーツ、パンプスにサンダルまで入れると平均20足以上持っているという調査結果が出ています」
柏恒夫編集長(67才)に言われ、自分の靴数を数えてみる(私は23足だった)。
「しかし、そのうちよく履く靴は3~5足。あとは不具合があって下駄箱に並んでいるだけ。皆さん、それだけ靴には痛い目にあっているんです」(柏さん)
もちろん、誰だって最初から“履けない靴”は買わない。お店で履いて、「大丈夫」と思ったからお金を払ったのだが、それだけでは充分ではない、と柏さんは語る。
「大なり小なり、人の足の大きさは左右で違うし、歩き癖もある。買ってしばらく履かないと、靴との相性は見えてこないことが多いんですよ」
相性のポイントは後述するとして、靴は「独特の宿命を背負っている商品」ともいう。洋服ならサイズが合わなくても気に入れば“お直し”という道があるが、靴にお直しはない。かといって、片方ずつ売るわけにはいかない。
製品になるまでの工程はざっと20ほどある。パーツを貼り合わせたり、縫ったり、引っ張ったり、叩いたりする。革などの素材づくりから数えたら、気が遠くなる工程数だ。
「これだけの作業を人件費の高い国内で全部行ったら、販売価格が高額になります。そこで、1990年頃から“世界の靴工場”となった中国からの輸入が増えたのですが、最近は中国の人件費が高騰し、リーズナブルな値段で売れる革靴を作るのが非常に難しくなってしまいました」(柏さん)
そのため最近は、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、ラオスといった東南アジア各地で作られた靴が、急激に増えてきた。
同誌の毎号の人気企画は、巻頭カラー2ページの〈都内の売れ筋〉。デパート、地下街、オフィス街の店、商業ビルの店など、4店舗の店長が売れ筋5点を紹介する。最も価格帯の高いのはデパートで、1万5000~2万5000円までで、5足ともヒールは低め。
逆にヒールの高い靴を売れ筋としたのは、銀座の商業ビルだ。5点中3点がハイヒールで、そのうち2点は透明なプラスチック製のヒール。価格は6900円が3点。8900円と9800円が各1点。
「靴業界は、バブル崩壊以降、ずっとデフレなんですよ。今は2万円前後の高級品と、5000~6000円前後のケミカル・パンプスの二極化が進んでいて、年々、低価格の方に比重が傾いてきています」と柏さんは顔を曇らせる。
しかし、そんな中で朗報は、“ハイブリッドカー”ならぬ、ファッション性と機能性を同時にかなえた“ハイブリッドパンプス”の出現だ。昨年の秋、同誌は〈特集 コンフォートの新スタンダード〉と銘打った特集を組み、その好評ぶりを紹介している。
東京・新宿のデパートでは〈価格は2万円平均で、通常の婦人靴より約2割高いのにもかかわらず、4~7月の売り上げは対前年比120%弱と順調に推移している。…売れ筋のキーワードは白、ピンクベージュ…など。ヒール高は5cmが強いが、はき心地がよいこともあり、7cmも増えている〉
自分に合ったいい商品を選びたいものだが、さて、これ以上、“履けない靴”の在庫を増やさないための靴選びのポイントは?
「長年、靴づくりを取材して感じるのは、靴にはお金を使ったほうがいいということです。メーカー出し価格が1500円程度で作る合皮靴と、6000円以上の本革の靴では、外からは見えない本底、中底、裏材などの素材や工法がまるで違います。
そして試し履きでチェックしてほしいのは足裏のアーチ。かかとや小指があたるとすぐにわかりますが、アーチは足裏に意識を集中しないとわかりません」(柏さん)
履けるけど、履き続けられない靴は、アーチが足や歩き方に合わないことが原因だという。そうして“当たり”を見つけたら、「買った店を“かかりつけ”にして、手入れや調整の相談をする」とよいそう。
靴の“安物買いの銭失い”とオサラバできそう?
(取材・文/野原広子)
※女性セブン2015年4月23日号