――UNOでも「賤ヶ岳」という単語が出てきてしまうほど歴史が好きなんですね。

柴田:小学生の時にはRPGの『信長の野望』で遊んでいたのですが、歴史を知らないから楽しむのに限界がありました。でも、中学生のとき三国志演義を題材にした格闘ゲーム『三國無双』シリーズが発売されて歴史の面白さを再発見し、知識を増やしてからRPGの『三国志』や『信長の野望』で遊んで中学時代は過ごしました。友だちとの日常会話も三国志になっていたほどハマりましたね。

 高校4年から6年まで体育以外はヒマだったので日本史、世界史、倫理など好きな科目を余分に履修してそればかり勉強していました。三帝会戦とかテニスコートの誓いとかエピソードつきで用語を覚え蓄積されると、それらが繋がっていく。世界史で流し読みした思想家の名前が倫理学で浮き上がり、全部つながる。歴史の用語を覚えるのは、ワシにとってコレクションに近い感覚です。

――歴史好きがうかがえるお話ばかりですが、先日、アニメ放送が最終回を迎えて虚脱状態になるほど熱中しているTHE IDOLM@STER(アイドルマスター、以下アイマス)が入る隙間がうかがえませんが?

柴田:いやいやいや~、時間はありますよ! ニコニコ動画が始まったとき、そこでアイマスを素材にしたまるでPVのようなMAD動画をみて感動したんです。これは大好きだ! と感動してCDを買ったのがアイマスとのおつき合いの始まりです。今ではシンデレラガールズのゲームをスマホでめちゃくちゃやっていますし、アニメも録画ではなく放送時間に見ていました。

――武将・三国志とアイマスは両方がなくてはならないものですか?

柴田:その両者はワシにとっては血肉です。でも、好きなものをだいぶやりすぎてしまうので、高校卒業まで6年かかりました。

――大学では戦国武将だけでなくアイマス愛についても大っぴらにできたのでしょうか?

柴田:大丈夫でした(上ずった声で)。いや、だいじょ、だいじょうぶだよ、大丈夫です! 話せば意外と通じるものですよ。

 アイマスではないのですが、大学に入ってしばらくしてから学科の友人達とで飲み会に行ったんです。そのとき、ワシが勝手に怖がって、趣味が合わないだろうと思っていた人がたまたま近くの席になって突然「オレ『あの花』(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』)が好きなんだよ」と急にアニメの話を始めて、そこで意気投合しました。

 他にも、まったく話したことがない同級生が森博嗣さんの『スカイ・クロラ』を読んでいてSFがめちゃくちゃ好きだと分かったり、こちらが思うより色々と許されるものですよ。

●柴田勝家(しばた かついえ)1987年10月3日東京都生まれ。本名は綿谷翔太。第2回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作『ニルヤの島』(早川書房刊)で作家デビュー。成城大学大学院文学研究科に在籍。修士論文のテーマは日本の媽祖(まそ)信仰。アイドルマスターの本家では星井美希、シンデレラガールズでは成宮由愛がお気に入り。東京都在住。5月4日開催の第二十回文学フリマ東京(東京流通センター)ではサークル「10L」で参加。

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