――歌手から芸人に転向したということですか?

タブレット:浅草東洋館は紹介で出演したんです。寄席とはいっても歌謡特集みたいな枠があって、その日は歌を歌ったんですね。1回きりだと思っていたんですけど、支配人が変わって出演メンバーを新たに集めることになって。それで定期的にレギュラーで出てもらえないかと。

 そうなってくると寄席なので、歌だけでは難しくて、芸人的なアプローチができないかということで。当時は演歌を出したりもしていたので、そこの事務所はぼくがお笑いをやるのに大反対でした。でも、名前を変えればいいよとなって、思いつきで、東洋館のためだけの名前だと思って、田渕純をタブレット純にしました。

――浅草東洋館ではどんなネタを?

タブレット:初めは“タブレット純子”って、女装をしていた時期もあるんですけど。ある日、昔作った曲を掘り返したんです。まじめに作った曲だったんですけど、今見たら変な曲だったので、お笑い的なことでやったらどうなるかなと。それで白身魚フライを妙にドラマチックに歌うというのを寄席でやったらウケたので、この路線はありなのかなって。初めてテレビに出た時のネタです。

――のり弁当の白身魚は、メルルーサという深海魚だったと熱く歌っていましたね。

タブレット:そうしているうちに、今のマネジャーが見に来ていて、歌ネタが面白いからとスカウトされて。それから完全に芸人になったというか。お笑いライブをやったのも事務所ライブが初めてです。事務所の紹介で、生まれて初めてオーディションに行ったりして。うまい具合に受かって、それから自然に芸人の流れができまして。

――演歌歌手の道を捨てて。

タブレット:そっちの事務所は演歌アイドルを作ろうとしていて、そういうのに合わなくて…。その時の自分の判断は、今思えば正しかったとはっきり言えます。あのまま歌手をやっていたら、歌うのが嫌になっていたと思います。

【タブレット純】
1974年8月31日生まれ。神奈川県出身。2002年、ムード歌謡の老舗グループ、和田弘とマヒナスターズに田渕純の名でボーカル加入。以後2年間、和田弘が亡くなるまで同グループで活動した。グループ解散後、ライブハウス出演などを経て、寄席・お笑いライブに進出。ムード歌謡漫談という新ジャンルを確立した。『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送)レギュラーなどで活躍中。

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