国内

自民党改憲漫画の何が残念なのか 改憲派ライターが読み解く

 自民党が作成した「改憲漫画」の評判が悪い。そこで「改憲派」ライター、神田憲行氏が、この漫画の「良いところ」をあえて探してみた。

 * * *
 今日5月6日は3日憲法記念日の振替休日である。ということは振替憲法記念日でもあるので、自民党が作った改憲啓発漫画「ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?」について、取り上げたい。ええ、強引な展開であることは承知です。

 まあ、評判の悪い漫画である。しかしその批判はいわゆる「護憲派」の人たちから寄せられているように思う。私は憲法9条の1項2項はそのままにして、3項を新設して、非核三原則「核兵器を作らない、持たない、持ち込ませない」を明記すべしと考えている。「憲法を1文字もいじってはならぬ!」という「護憲派」の人から見れば、私は「改憲派」となるだろうか。これはいわば改憲派から見た、自民党改憲漫画への評価である。

 まず漫画の主人公である一家の設定にやや引いた。「夫、妻、子ども、夫の父、夫の祖父」という女1人だけで男4人4世代同居という設定に、

「奥さん大変やんけ。旦那とどんな家事分担してんのや」

 とすぐ気になった。でも夫の父と夫の祖父でダブルで年金が入ってくるのでかなり豊かな生活なんだろなあ。

 そのあと「憲法は時代遅れ」みたいな会話が始まる。

夫の父「スマホだけじゃなくプライバシーもストーカーも環境問題もそんな言葉すらなかったからなあ」

妻「環境問題についても書かれていないなんて今の憲法ってエコじゃないのね!!」

夫「まぁ翔太の未来を考えるとやっぱり環境問題は大事だよなぁ」

 新しい人権として環境権とプライバシー権を提案するのは、改憲論のなかでも筋が良い。社会的ニーズが高い上に、判例ではほとんど認められていないからだ。プライバシー権は判例でも認められたが、一部の肖像権だけだ。環境権は昭和56年大阪空港公害訴訟最高裁判決でも、平成5年厚木基地公害訴訟最高裁判決でも認められなかった。

 環境権が認められるなら、騒音に悩まされる自衛隊・米軍基地周辺に住む人たちがぐっと訴訟を提起しやすくなる。辺野古基地移転問題でも、環境への影響が指摘されているだけに、「欲しい人権」である。

 そこで自民党が2011年に発表した「憲法改正草案」をみると、あった。

《第二十五条の二》 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない

「○○の自由」とか「○○の権利」と書いていなくて、なんか奥歯にモノが挟まってる書き方だなーと思って「改正草案Q&A」で確かめると、

《(前略)国を主語とした人権規定としています。これらの人権は、まだ個人の法律上の権利として主張するには熟していないことから、まず国の側の責務として規定しました》

 ここまで期待持たせておいて、なにを突然言い出すのか。熟しているよ! 日本国憲法は時代遅れだ!→だから○○という人権がない!→でも権利として熟してないからとりあえず「国の責務」ね! という流れにガックリきた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン