ビジネス

就活中の学生 「ベンチャー」という言葉を誤解する人が多い

 就活生はどのように企業を選べばいいのだろうか。思い込み、勘違いはしていないか。千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏が実例と企業選びのコツを紹介する。

 * * *
「いつやるの?今でしょ!」

 予備校・東進ハイスクールの現代文の名物講師、林修先生の言葉ですね。2013年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞も受賞しました。この年は、この他に、「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」も年間大賞に選ばれましたね。どれも今、言うと、少し恥ずかしいですが……。

 今回は、就活に関連して「今、その企業に行くべきなのか?行っていいのか?」「これから、その業界・企業で何が起こりそうなのか?」ということについて考えてみたいと思います。「一刻も早く内定が欲しい」と思うがゆえに、このことがあまりに無視されているのではないかと思うわけです。

 最初に言っておきますが、これは答のない話ではあります。複数のエピソード、視点を提示しつつ、徒然なるままに書き綴ることにしましょう。

■「そして、みんな同じ銀行になった」という話

「俺、一勧(第一勧業銀行)に行くことにした。富士(銀行)と迷ったけど、やっぱり行風が合っているな、って」

「俺も迷ったけど、結局、富士(銀行)にした。絶対にウチにきてくれって他の銀行にも口説かれたけどね」

 1997年に社会に出た私。学内ではよくこんな会話を聞いたものでした。結局、その後、同じ銀行(合併してみずほ銀行)になったのですけどね……。今の大学生は、おそらく企業説明会で初めて知る事実かもしれませんが。

 その頃から、「金融機関は再編が起こるだろう」ということは言われていましたが、これほど早く再編が進むとは思いませんでした。当時「都市銀行(通称都銀)」と呼ばれていた銀行は3メガバンク+αになりました。都市銀行のひとつだった北海道拓殖銀行は経営破綻しました。

 銀行に限らず、この約20年で業界の再編は進みましたよね。合併、経営統合などの他にも、事業の売却、切り離しが行われた例などもありますよね。

 同じ会社で定年まで勤めたいという志向の学生はここ数年、増加傾向ですが、別に早期離職しなくても、気づいたら企業が変化していったということがあり得るということを覚えておいてください。

■そのベンチャー企業は、いまどれくらいベンチャーっぽいのか?

「先生、俺、ベンチャーに行きます。リクルートに行きます!」

「お前、バカか。とっくに大企業だろ」

 大学時代、履修していた講義でお世話になった経営学者米倉誠一郎先生に挨拶に言った時、私はそう言われました。懐かしいです。先生の言っていることはいちいち正しく、当時のリクルートは創業40年近くでしたし、従業員は3000名前後、営業利益も1000億円を超えていました(1兆円の借金があったので、その返済にまわされていたのですが)。私は、採用担当者や社員の話、イメージから「俺はベンチャーに行くんだ」と信じていたわけですが、冷静に数字を見るとベンチャーなワケがないのは明らかです。

 このような誤解をする学生をよく見受けます。「ベンチャー」という言葉に踊らされて、実態を見ていないわけです。「ベンチャー」と言っても、規模、資本構成、歴史によって全然違うわけです。

 ただ、採用広報上はもうかなりの規模になっていて歴史のある企業でも「ベンチャー」だと訴求するわけです。当然、創業して間もないころ、上場する前、その後では企業の状態も、任される仕事も違うわけです。当然、仕事の醍醐味も変わります。ベンチャーだと思い、大企業と違って、スピード感があって、大きな仕事を任されると思ったら、普通の大企業とあまり変わらなくてガッカリ、ということがよく起こるわけです(この大企業はスピードが遅い、任される仕事が小さいというのも大いなる誤解ですが)。

 そのベンチャーはどんなベンチャーなのかという視点を持って置きたいところです。

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン