栗山は農水省のエリート官僚役 (C)2015 映画『種まく旅人 くにうみの郷』製作委員会
栗山:テレビや映画だとカメラが撮ってくれたところが映し出されるわけじゃないですか。舞台では全体をお客様が見ているし、みんなが同じ所を見ているわけではありません。自分の思いをお客様に出す。そういう気持ちになる。こういうお芝居の仕方って、映画やドラマだけやっていては知らなかったと思います。
――そもそも初舞台は自分からやろうと思ったんですか?
栗山:いえいえ(笑い)。最初は舞台も蜷川さんも怖いし「ヤダー!」と(笑い)。ずっと「怖い怖い」と言ってました。稽古に行っても。でも、蜷川さんは実際はとてもやさしかった。何も知らない私に一から教えてくださいました。多分、蜷川さんは「舞台って楽しいでしょ」と教えたかったんだと思います。厳しいながらもとてもやさしくしてくださったので、私は舞台が怖いものではないと知ることができました。実際チャレンジしたら「あぁ、大丈夫だ!」という気持ちになれたんですよ。でも、もし最初につらい思いをしたり失敗したらもっと舞台が怖くなって一生やらなかったと思うんです。蜷川さんには初めての舞台で楽しさを教えてもらえた。だから、今も続いていると思います。
――蜷川さんには具体的にどんなことを教えてもらったんですか?
栗山:直接何かを言われたわけじゃないんです。私が怖い怖いと、まるで蜷川さんがなにか言ったら殺されるんじゃないかくらいビビっていたので、蜷川さんもそれをご存じだったんですね。直接何を言うわけではなかった。他の人にアドバイスしたり注意したりすれば、私がそれを聞いているだろうって思ってくださったようなんです。
まぁ、私の勝手な推測ですが、蜷川さんは一人ひとりの性格や空気を読んで演出されているんじゃないかと思います。だから、ビビる私には直接叱ることはせず、どちらかというと「もっと自由にやっていいよ」とか背中を押してくださった。私は初めての舞台ということもあって、どうしても後ろに下がりがちだったんですね。共演者が前にいるほうが安心なので。そんな私に、蜷川さんは「前に出ろ、前に出ろ」と(笑い)。言われたのはそれくらいですかね。
――実際、他の方に注意しているのを聞いて自分の悪い所を直していったわけですか?
栗山:はい。何事もそうですが、飛び込まないとわからないじゃないですか。飛び込んだときにやさしく教えてくれる人がいる環境だと私自身が変われるし、ありがたいなと思います。ドラマ『ハゲタカ』のときも同じですね。大友啓史監督に経済用語からキャラクターのそのときの気持ちまで細かく説明していただいた。そういうことを毎回丁寧にやってくださる監督さんってそうそういないと思うんですが、そのときの私が普通の役の経験がほとんどないということで、それを理解した上でやってくださったんだろうなと思います。新しいことにチャレンジするには勇気がいりますが、その時々に出会ったやさしい方々に支えられて少しずつ成長しているのかなと思います。
――共演者にもそういう方はいらっしゃいますか?
栗山:もちろんいます。映画やドラマだとシーンごとの撮影になるので、会わない方もいらっしゃるんですが、気づいたことでも言ってくださる方はありがたいと思いますね。本来、他人のことだから流していいのに、私のために言ってくださるわけですから。
――例えば、どなたですか?
栗山:ドラマ『ATARU』シリーズでご一緒したSMAPの中居正広さんや、北村一輝さん。最初、ドラマが刑事もので障がいのある青年がいて、と聞いたとき、あれほどコメディータッチが強いとは思っていなかったので、すごく戸惑いがあったんです。撮影に入ると、当日に台詞が足されたり「ここでコケます」と言われたり。「えー!?」と思うことがしょっちゅうあって、結構必死になってしまっていたんです。そんなときに中居さんや北村さんが「思い切ってやっちゃいなよ」って背中を押してくれたり、「ここはこうやったほうがいいよ」と一つひとつ教えてくれたり。ドラマの中では3人がチームのような感じでしたが、撮影でもチームのようにいさせてくれた。温かいなと思いました。
――他にもいらっしゃいますか?